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―5話

道場に竹刀と竹刀がぶつかる音がこだまする。

真選組には若いくせにべらぼうに強い切り込み隊長がいる、という噂を聞いたことがあった。
若くて強い隊長。どんなイカツイ人なのかと想像していたので、ゆるんゆるんな沖田さんを実際見て、本当に強いのかと思った。
しかし噂は本当であった。

早いのに、竹刀が重い。
細い腕から瞬発力とスピード、タイミング全て完璧に計算された一撃がどんどん飛んで来る。

「っ強…」
「お前もなかなかでさ。ここまで攻撃してやられなかったヤツは久しぶりでィ」

気まぐれな沖田さん同様、どこから攻撃が飛んで来るか分からない。

「痛っ!」
「あ、ヤベ」

汗が目に入って目を瞑った瞬間沖田さんの竹刀が顔面に入ってしまった。
沖田さんは私が避けられるもんだと思い力いっぱい竹刀をふるっていたようで、へたりと座り込んだ私に「おい、大丈夫か」と珍しく少し慌てていた。

少し頭がクラッとする。

「…はぁ竹刀で良かった」
「真剣だったらお前の顔今頃ぱっくりでさ」
「あ〜悔しい〜」

傷を触りながら沖田さんを見る。いつもの涼しい顔でなく沖田さんも汗をかいていた。
赤く開いた瞳孔で私の瞳を覗きこむ。

「男装お前人を殺したことあるだろ」
「……はい」

嫌なことを聞かれた。

「攘夷戦争に少しだけ参加してました」
「……」
「あ、まだ子どもだったんで本当に少しですよ。今はちゃんと反攘夷ですから。剣の師匠が参加してたから少しだけ…」
「そうかィ」

本当に剣はその人自身が分かってしまうから困る。特に沖田さんのような勘が鋭い人には‥。
沖田さんの剣は沖田さんらしく、無鉄砲で強く、何より美しかった。


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