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まさか江戸にいるなんて思ってなかったし、この広い江戸で出会ってしまうとも思ってなかった。
「え、名前」
「え」
沖田さんとの巡回中、声をかけられた。
本名の女の名前で呼ばれたのにうっかり返事をしてしまう。
「え、うそ。マジでか‥」
「え、え‥」
信じられないというように目を大きく見開いたその人はポカンと立ち尽くす。
そんな光景を見た沖田さんが怪訝な顔をして口を開いた。
「旦那、男装の知り合いですかィ」
白いふわふわの頭を見たのはいつぶりか分からない。
「‥銀時」
久しぶりに見た銀時は昔と全然変わっていなかった。
「お前なに真選組の制服着て‥」
「オレのパシりでさ。で、お二人はどういう関係で?」
沖田さんの言葉にハッとする。このままでは女だとバレてしまう。
「あ‥と、古い友人です。銀時!久しぶりだから自己紹介な!オレは真選組1番隊の名字男装。男装って呼んでな!男装って!」
「‥え、は、はい?」
頭にハテナを浮かべる銀時に無言の圧力をかける。
「銀時とは前に言った攘夷戦争の時に少し一緒に戦ったんですよ」
「‥なるほどねィ。ってことはお前の師匠は旦那ですかィ?少し太刀打ちが似てると思ったんでさ」
違う。師匠は銀時じゃない。でも沖田さんは変に勘が鋭くて本当に困る。
「あーあー沖田君惜しいな。コイツの師匠ってのとオレがガキん時一緒に剣習ってただけだよ。まぁオレのが強かったけどね」
銀時は頭を掻きつつダルそうに答える。
「しかし江戸で真選組してるなんてなぁ。なぁ、今度ゆっくり話そうぜ。聞きたいこと山ほどあるわ」
そう言って名刺を渡された。
「万事屋?」
「何でも屋だ。どS上司のパワハラセクハラに悩んだらいつでも来い」
「ひでぇや旦那」
銀時はそう言って去っていった。
銀時は銀時なりに生活をしているらしい。
私の状況を察して今は何も聞いてこなかったのがありがたかったし、そういうとこが変わらないな、と思った。
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