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「は、は、離してくださ‥」
「今さらなんでさァ。誰が昨日着替えさせてやったと思ってるんでィ」

そう言われて昨日のことを少しずつ思い出してきた。
夢だと思ったものはどうやら全て現実での事だったようだ。
私の曖昧な記憶がただしければ沖田さんに着替えどころか身体も拭かれた気がする。


終わった。
言い訳のしようがない。
完全にバレた。

私の真選組生活はここで終わりだ。
いや、真選組の生活どころじゃない。
女であることを隠して入隊してたなんて絶対切腹だ。

恐怖に身体が固まってしまう。

「その顔じゃ己の罪の重さは分かってるようだねィ。勿論お前は切腹でさ」

沖田さんはつーっと爪で私のお腹をなぞって切る仕草をした。

「っ、ま、待っ‥」

沖田さんは私の着物の帯をほどく。
慌てて抵抗するもむなしく私からハラリと着物を脱がせた。

「っ‥」
「お前はこのまま皆の前で全裸になって切腹でさ」
「そ、そんな‥」
「手ェどけなせぇ」

胸を隠そうとするが腕を掴まれて上にやられてしまう。
なんという辱しめだろうか。
どうせ切腹するならいっそ今ここで死にたい。

「色気ねぇパンツ」
「っほっといてください‥」

熱でうなされてる間にさくっとひと思いにに始末してくれたらどんなに良かったろうか。
今までの思い出が走馬灯のように巡った。

近藤さんゴリラ扱いしてごめんなさい。
土方さんマヨネーズ隠してごめんなさい。
沖田さん‥こんな部下でごめんなさい。


「せめて最後は沖田さんに‥介錯、お願いします‥」

覚悟を決めてそう言った瞬間、脱がされた着物をかけられた。


「冗談でさ」
「は?」

驚く私に沖田さんはケロリと言い放った。

「お前が女だってんのは入隊試験の時から知ってやしたぜ」
「‥‥え?」
「他の野郎は気づいてねぇと思うけど、オレからしちゃ剣の太刀筋見りゃ一発で分かりまさ」


この人は一体何を言ってるんだろう。


「知ってて黙ってくれてたんですか?」
「まぁ、お前は暇潰しにちょうどいいんでね。いなくなったら困りまさ」
「あ、ありがとうございます」
「ただし、ばらされたくなければオレが今から言うことを聞きなせぇ」


あぁまただ。
また私の下僕ランクが上がってしまった。

しかし命拾い出来るならどんな下僕にだってなってやろうじゃないか。

沖田さんのこれまでの悪行を思い出すと一体どんな恐ろしい事をさせられるかと思ったが、
沖田さんから言われた命令はとても簡単なものだった


「本当の名前、教えてくだせぇ」





つづく


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