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「ひ、土方さん。お待たせしました」

「え‥」



目が合うや否や土方さんは咥えていたタバコを落としてしまった。



「ちょ、火事になりますよ」
「あ、名字か‥。一瞬誰かと思ったわ」
「土方さん顔赤いですよ。オレそんな可愛いですか?」
「いや、なんつーか‥女にしか見えねぇ」



そりゃ女が女の格好してりゃ女にしか見えないだろう。

土方さんは運転中も落ち着きがなくチラチラこちらを向いてきた。

タバコも咥えた先からポロポロ落とす。

落とす度にそれを拾って消してあげた。

車はふらふらといつ事故にあってもおかしくない状況の中、なんとか現場の近くまでたどり着いた。



「店には代わりの女出すって伝えてある。いいか、深入りすんなよ。適当に笑って酒ついどきゃいいから、それ以外はすんなよ。」

「は、はい」

「まぁ何かあっても総悟が裏ついてっから平気だと思うけどよ‥」




心配なのかクドクドと話す土方さんと別れ、はぁ、と一度深呼吸をして店へと入った。

もくすぐ夕方になる。




ーーーーーーー



「あぁ連絡あった代わりの子ね!名前は?」
「えっと名前です」


お店のひとに名前を訊かれてとっさに本名を出してしまった。



「名前ちゃんね!可愛いね!うち入りなよ〜うち給料いいよ〜花魁目指せるよ〜」
「え、いや、そんな」
「あ、今日ついてもらう客ね。ちょっと怖いからね。聞いたこと他所で喋って斬られた女の子もいるからね。気をつけてね〜」
「え‥」
「じゃあ、いってらっしゃーい」



物騒なことを言われた。

緊張が高まるがとにかく今日は任務を頑張らないといけない。

新人だからといって出来ないではすまないのだ。



よし、と覚悟を決めて部屋の襖に手をかけた。






つづく


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長夢
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