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沖田さんの傷は右腕を少し斬られたものらしい。着物が血で紅く染まっていた。

しかしそれは多分沖田さんの血より、返り血の方が多い。



部屋について、救急箱を持ってきた。

「あの、手当‥オレでいいんですか?医療班呼びますか?」

「こんくらいお前でいいでさ。あとオレって言わない約束でさァ」



沖田さんはまだ不機嫌そうだった。
文句がありそうな目付きで私をギラギラ睨んでいる。

もしかして私に怒っているのかもしれない。
今回山崎さんの代わりに潜入捜査に出たことを沖田さんは現場で知ったはずだ。

急に現れたのが山崎さんでなく私で驚いたことだろう。





「沖田さんすみません、勝手に」
「すみませんじゃ、すまねぇな」


消毒しようと掴んだ手を翻し、沖田さんは私を押し倒した。


「っえ」



沖田さんの長い髪が私の頬にかかった。 鋭い眼差しで私をとらえる。



「沖田さん、怒ってます?」
「さぁな」


いや、明らかに怒っている。

沖田さんの怒りは冷静に、しかし豪々と青い炎のように私にふりかかっていた。

あまりの怖さに背筋がぞっとする。



「オレがあそこで行かなきゃお前どうなってたかねィ」
「え?」
「触られてたろ」



高杉がちょっかい出しているところを沖田さんには見えていたらしい。



「こうやって皆の前で高杉に脱がされて、女ってバレてたかもな」
「っ」

沖田さんは私の帯の結び目を程き、着物を荒々しく引っ張った。

着物は下げられ、肩まで出てしまう。



「だからお前にはまだ早ェって言ったんでィ」
「っだ、だって‥」
「本当に、お前、ムカつきまさ‥」



沖田さんはポツリと呟き、露出した私の肩に噛みついた。


「っ痛」


私が小さく悲鳴をあげると沖田さんはその美しい顔でニヤリと笑う。



こんなに怒りを向けられていて恐ろしいのに、私は不謹慎にもその表情にドキッとしてしまった。



「女同士、いけない事してるみてぇだねィ」

そう言って沖田さんは私の口を塞いできた。



「っ、ん、」

キスをされている。

「や、沖田さっ‥」



キスはどんどん深くなり身体の体温が上がる。沖田さんは一向に退く気配はない。

強引に押し寄せてくるキスに呼吸がままならず、頭がクラクラとしてきた。



このままどうなってしまうのかと途切れそうな意識の中で思ったその時、襖が開いた。



「おい、総悟。ケガ大丈夫‥って、‥、、」
「‥‥やべ」


土方さんだった。

女装した沖田さんがこれまた女装した私にキスをしている状況。何なら私は半裸である。


土方さんはそんな私たちを見て固まった。

その後、顔を真っ赤にして私に跨がっていた沖田さんを慌てて引きずり下ろした。



「っ、、馬鹿野郎!何してんだよ!!」
「別にちょっとちょっかい出してただけでさ。女同士いいじゃねぇですか」
「女同士じゃねーだろが!アホなこと言うな!テメーもう切腹しろ!」



私は助かったような違うような何ともいえぬ気持ちになり、半泣きで土方さんに駆け寄った。



「ひ、土方さん!助けて下さいいい」
「あ、てめえ土方んトコ逃げる気かィ」
「も、も、もうダメです!部屋変えてください〜ほんとに、お願いしますうう」
「名字‥お、落ち着け」



沖田さんは土方さんにげんこつを喰らい、ズルズルと引きずられていった。



つづく



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