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ー11話
「名字、お前鍔変えたのか」
鍛治屋さんに鍔を取り替えてもらった日、土方さんに声をかけられた。
「へへ、そうなんです」
土方さんは吸っていたタバコを消して私の刀を手に取り鍔をまじまじと見た。
「上物だな」
「へへへ」
「お前、顔ゆるんでんぞ」
「へへへ」
「オイ、そのたるんだ顔どうにかしろ」
嬉しくてつい口元が緩んでしまう 。
土方さんはそんな私の頬をむにむにとつねった。
「痛いでひゅ」
「お前ただでさえナメられる面してんだからもっとキリッとしやがれ」
投げてくる言葉は酷いが何だかんだ土方さんは優しい。
それに自分とちゃんとした距離をとってくれるから助かる。
そう、うちの隊長とは大違いだ。
「その手ぇ離せよ、土方」
いつの間にか沖田さんが土方さんの腕をつかんでいた。
土方さんは沖田さんを見てため息を吐く。
「お前、本当名字に関わるとムキになるな」
「男装はオレの大事な部下なんでさ」
沖田さんはそう言って私を後ろから抱き締める。そのままズルズル引きずられた。
スカーフが首を絞めてきて苦しい。
「くっ、苦しいです」
「お前土方さんと喋ってる時女の顔してまさァ」
「んなことないですよ!」
土方さんと違ってうちの隊長は本当にめんどくさい。
「鍔、つけたんかィ」
「はい」
「ふーん」
沖田さんは私の刀をじとーっと見た。
「早く使う出番が来るといいねィ」
「いや、平和が一番ですけどね」
そう話していたらちょうど緊急出動の要請がかかった。
歌舞伎町で攘夷志士の目撃情報が入ったらしい。
「おら、行くぞ」
「は、はい!」
沖田さんとパトカーに乗り込み、山崎さんに運転してもらいながら状況確認を受けた。
「目撃されたのは桂小太郎。場所は呉服屋です」
「げ‥」
「何でィ、桂は嫌いなんかィ」
「いや、嫌いって言うか‥」
この前まで仲間として真選組にいたのに今度は敵としてのご対面だ。
「今日こそ捕まえるぜィ」
パトカーがスピードを上げる中、沖田さんはギラギラとバズーカの手入れをしていた。
現場は煙がもくもくと立ち込めており視界が悪かった。
その煙炎の中、小太郎が不敵に笑っている。
「ふははは、真選組の諸君、遅かったじゃないか」
「待ちやがれ桂!」
沖田さんがバズーカを向ける。
小太郎がこちらを向いた。
私に気づいたようだ。
沖田さんがバズーカを打ったと同時に小太郎が私の腕を引っ張った。
沖田さんのバズーカと小太郎の爆弾の煙が合わさり、視界は真っ白だ。
しかし、どうやら今私は小太郎の腕の中にいる。
「こ、小太郎‥」
「名前もいたのか。ちょうどよかった。これを渡したくてな」
「はぁ?」
小太郎は紙袋を渡してきた。
「何これ?」
「後で開けてくれ」
「ちょ、待っ‥捕まえるから手ぇ出して」
「いくら名前のお願いでも捕まるわけにはいかないな」
「っんん!?」
小太郎に顎をつかまれる。
風が吹き煙がはけていく。
その風に小太郎の髪も揺れた。
「こ、こたっ‥今っ、」
「挨拶だ、グッバイ」
唇を重ねられた。
小太郎は昔から思い立ったようにキスをしてくる。
それは小太郎的には家族間でする挨拶のようなものらしいが、それをする度に高杉達が烈火の如く怒っていた。
しかし今は別の人が怒りの炎を燃やしている。
「かーつーらーーー」
「お、沖田さん‥」
小太郎にキスをされた時、ちょうど煙がはけていて沖田さんに見られてしまった。
沖田さんの怒りにも気がつかず小太郎は笑いながら消えていった。
残ったのは怒りに震える沖田さんと、その沖田さんに震える山崎さんと私。
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