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帰りのパトカーの中は物凄い冷えきった空気だった。
闘いは終わったというのに沖田さんは目を見開き、怒りのオーラを纏いながら、ただひたすら一点を見つめていた。
沖田さんの怒りを感じた山崎さんは地味に徹して気配を消し、私は隣に座る沖田さんの目を見ないよう必死で窓の外を眺めた。
屯所に帰り、沖田さんは当たり前のように私の部屋へと入ってきた。
「名前おめぇ、桂に毒盛られてるかもしれねぇな」
「は?え、いや」
「解毒剤、飲んどくか」
沖田さんはそう言って救急箱を開き解毒剤と書かれた瓶の蓋を開けた。
「万が一があるだろィ」
そう言ってそれを自分の口に含み、私に覆い被さってくる。
「え、あの‥っん、」
「‥逃げんな」
沖田さんの舌にのって私の口内に解毒剤が流れる。
いきなり喉に流れ込んできた液体にむせたが、強い力で掴まれて逃してはくれなかった。
そのまま沖田さんのキスがどんどん甘いものへと変わり、腰がへなりと抜ける。
「やっあ」
「勘違いすんなよ、消毒でさ」
「っ‥は、」
沖田さんは本当に全てを塗り替えるが如く何度も深く口づけをしてくる。
「っ、お、沖田さ‥」
この人は何を考えてるんだ。
ついこの間、同じようなことしてお詫びの品くれたじゃないか。
何でまたこんな状況になっているんだ。
「っ〜」
「っ!痛ぇっ」
たまらず沖田さんの舌を噛むと、沖田さんはムスーッとこちらを睨んだ。
「何でィ」
「こ、こっちのセリフです!!」
「っ‥また出ていくかィ?」
「っ〜」
「出ていくならちょうどいい。名前は‥1番隊から外しまさ」
「えっ」
「やっぱ女のお前にゃ無理でさ。お前は土方さんの小姓でもしてなせぇ」
勝手だ。勝手すぎる。
沖田さんの手を払い、今度は私が沖田さんを押し倒した。
「女だからって関係ないです!唇のひとつやふたつ‥敵に奪われたって痛くもかゆくもないです!」
沖田さんは私の目をじっと見た。
「そこらへんのチンピラにされるより、沖田さんにっ‥キスされる方がよっぽどダメージでかいです」
沖田さんにキスをされるのは何だか心が直接抉られるようだった。
刀を真っ向から受けてた頭の先からぶった斬られてる気持ちになる。
「‥何ででさ」
「そんなの、‥わ、分かんないですよ」
理由なんてこっちが知りたい。
沖田さんの言動は私の心をぶんぶんと振り回す。
心臓が痛い。
「‥1番隊、外さないで下さい」
私は沖田さんの隊服を掴んだ。
沖田さんはうつむいてため息を吐く。
「‥1番隊は命を落とす可能性が最も高い部隊でさ」
「はい」
「敵に唇奪われるような醜態さらすくらいなら死ね」
「‥はい」
「死にたくねぇならもっと強くなれ。今日から夜間稽古つけてやる」
「ほ、ほんとですか?」
「言っとくけど容赦しねぇからな」
「はい!」
「オレの稽古についてこれなかったら1番隊はやめてもらうぜィ」
こうして私は沖田さんに稽古をつけてもらうことになった。
無表情で気がつかなかったが、この時沖田さんは本気で怒っていた。
私はそれに気が付かず、稽古をつけてもらえるとただ単純に喜んだ事を後々後悔することになる。
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