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ー12話



あれから半月、未だに稽古は続いている。

「おめーも大概頑固だな」
「沖田さんこそ‥」


突き指をして真っ青に腫れた指を右手ごと竹刀にぐるぐるとテーピングで巻き付けた。
その様子を見た沖田さんは呆れたようにため息をつく。


「そんなに1番隊に固執しなくていいと思うけどねィ」
「‥ほっといてください」

傷だらけの私に対して沖田さんは白いつるっとした肌をしている。

「まぁいいけどよ」

竹刀を向けた私に沖田さんも身構える。
腫れた瞼で視界は悪い。
しかし、身体の動かし方が少しずつ掴めていた。

これまでは高杉の身体の動かし方を真似して戦っていたが、男と比べて身体の小さい自分の重心の場所が分かってきたのだ。

足の裏から生み出した力を身体から腕へと伝わせ、さらに指の先へ、最後に刀に持っていく流れ。
相手の殺気と自分の呼吸のタイミング。
神経を尖らせ、闘いの直感を見定める。

全てを一太刀にこめる。

「っは!」


私と沖田さんが同時に出た。
パーンと甲高い竹刀の音が道場の高い天井に鳴り響いた。
沖田さんの竹刀が私の頭にもろに入った。


「あ、これ‥やば‥」


視界が一瞬チカチカしたと思ったら、それがどろどろと真っ暗に染まっていった。



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