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はちみつの匂いがして目を覚ます。
目を開けると部屋の布団の中だった。
沖田さんがすぐ横で眠っているのを見て、稽古の途中で意識を失ったことを思い出す。
鼻を掠めたはちみつの匂いが自分の身体からしているのに気付き、また沖田さんに薬を塗られたのかと、恥ずかしくなった。
沖田さんは長い睫毛を伏せてよく眠っている。目の下にはクマを作っていた。
(綺麗な顔だな‥)
真選組1番隊隊長。
沖田さんはどれだけ重たいものを背負っているのだろう。
「‥隣、離れたくないなぁ」
眠る沖田さんにポツリと呟く。
私が1番隊を離れたくない理由は、沖田さんが背負っているものをただ一緒に持ちたいからだ。
沖田さんは不思議な人だ。
気分屋でサボり魔で、たまにセクハラもしてくるが、私にとって何だかんだこの人はいつも隊長という役割をしてくれていて、本当に‥どこまでいっても1番隊の隊長で。
目には見えない沢山のものを平気で1人で抱えて、涼しい顔をして。
私はそんな沖田隊長の力になりたいのだ。
隣で一緒に歩きたいだけなのだ。
ーー
沖田さんの前髪にそっと触れた。
柔らかいはちみつ色の髪の毛。
さらっとした前髪をかきあげると沖田さんのおでこが少し赤くなっていた。
「ん‥」
沖田さんがぼんやり目を開ける。
赤い瞳がうっすらと光り、その中に私の顔を映した。
「‥おう、目ぇ覚ましたか」
「昨日は途中ですみません、また今日改めてお願いします」
「‥稽古はもういいでさ」
「え?」
「オレの額に竹刀当てたやつは久しぶりでィ」
沖田さんはむくりと上半身を起こして赤くなっているおでこに手をあてた。
「私が?当てたんですか?」
「そんなことも確認する前にくたばっちまったんかィ」
沖田さんは呆れたように私を見る。
そして私の頭にぽんと手を置いた。
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