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ほらほら〜と布団から追い出され仕方なく立ち上がった。


「‥もう、酔いが冷める前に忘れてくださいね」
「‥‥」


何だか恥ずかしくてうつ向いてポツリと唱えたが沖田さんは黙ったままだった。

どうしたんだろう、と顔を上げると目をぱちくりとさせた沖田さんが視界に入る。


「酔い、さめたわ‥‥」

びっくりした顔をしてそう呟いたかと思いきや、いきなりがばっと、布団から出てくる。



「‥出掛けやしょう」
「は、はい?」
「それ着てる名前と出掛けたいでさ」
「いや、それはまずいでしょ。他の人に見られたら女ってバレますって」
「外は暗いし大丈夫でさ。ほら、化粧もすりゃ‥」


沖田さんは私の数少ない化粧道具を漁り、手際よく私に化粧をしはじめた。


「目、瞑れィ」
「沖田さん‥何でお化粧、出来るんですか?」
「ほら、動くなよ」


沖田さんは質問には答えてくれず、私の瞼に色をさし、唇に紅をのせた。
最後に髪の長いカツラを被せられる 。


「‥ほら、やっぱ世界一可愛いでさ」
「っ、もう、勘弁してください」


手をひかれて二人でこっそり屯所を抜け出した。


「どこ行くんですか?」
「‥散歩」





ーーーー



月夜がぼんやりと沖田さんと私を照らしている。

沖田さんの悪酔いはなかなかさめないようで、私の手をぎゅっと握ったまま離さず、その顔はまだ赤いままだった。


沖田さんの鼻歌を聞きながらゆっくり散歩をするのは、何だか歩きながら空に浮かんでいるようで、とても不思議な気持ちだった。


「傷、消えたな」

ふと、私の頬を見て沖田さんが呟く。

「はい。もう平気です」

沖田さんはゆっくり私の頬に手を触れた。
そのままじぃっと私の顔を見る。

「‥‥っ」
「‥何でィ」
「あ、の、恥ずかしいんですけど」
「ちゅーでもされるかと思ったかィ?」


正直当たっている。
沖田さんは今までの前科がありすぎる。


「え、いや‥」
「はは、お前案外女なんだねィ」
「違います!違いますよ!」
「‥可愛い」
「えっ」

そう言って沖田さんは私の頬にちゅ、とキスをした。

「‥っ〜」
「あれ、口のが良かったかィ?」



言葉を失う私を見て沖田さんはニヤニヤと笑う。


「たまにゃ夜の散歩も悪くねぇな」


沖田さんはそう笑ってまた鼻歌のつづきを歌い出した。



つづく


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