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帰り道は銀時に送ってもらった。


「ねぇ、銀時」
「んー?」

銀時は酔っているのか少し頬を赤く染め、上機嫌に歩いていた。
話しかけるとにこりと笑ってこちらを振り向く。昔からそうだ。
いつも彼は私に無意識に笑顔を作ってくれている。


「ほんとに良かったねぇ」
「なにが?」
「ん、何て言うか大切なものが出来てさ。」
「なんだよ」
「だって最後に会った時は、お互い空っぽだったから‥」
「最後に会った時‥ってお前‥」


銀時にニヤニヤ笑われてハッとする。
銀時と最後に会った時、私は高杉と離れた直後で心身共にとにかくずたぼろだった。

銀時はあの時自分だって辛かったはずなのに、そんな私をずっと寂しくないように抱き締め、一晩中愛情を注いでくれた。

「今がどんなに辛くてもさ、死ぬなよ。お前は生きなきゃ駄目だ」

銀時はそう言って悲しい笑顔を向けてきた。
それが私たちの最後。


「っあ、あの時は、」
「なに?ちゃんと覚えてんの?」
「っ〜」
「まぁ、名前にしちゃ一晩の過ちだよな〜」
「ち!違うよ!」

私が足を止めて銀時を見ると銀時は目をぱちくりさせた。

「え、違うの?何?もしかしてオレが本命だった!?」
「いや、そういんじゃなくて。あ、あの時は確かに高杉と離れて寂しくて‥押し潰されそうで、でも銀時がいたから、今私はここにいて頑張れてるっていうか‥」
「‥名前」
「銀時がいなかったら、あの時私死んでたよ。銀時のおかげで自分の事を大切にしてくれる人がいるって分かったんだ。だから、ありがとう」

銀時は恥ずかしそうに頭をかいた。

「いや、そんな。まさか礼言われるとは‥お前何なの」
「え?」
「もー。お子ちゃまのくせに生意気」

鼻をつままれておでこにキスをされた。ふわりと銀時の癖っ毛が顔にかかってくすぐったい。
そのまま顔を近づけてきた。


「銀さんの腕、今晩もあいてますけど?」
「いや、もう間に合ってます‥」

頬をすり寄せて耳元で誘ってくる銀時を慌てて払う。

「ハハ、ほんとに間に合ってんのな」
「え?」


銀時が視線を送る前の方を見ると綺麗なはちみつ色の髪が闇夜に浮かんで見えた。


「旦那ァ、人の部下に何ちょっかい出してんでさァ」
「お、沖田さん!?」
「なに、お迎え?真選組ってーのはずいぶん過保護な職場だね」



沖田さんは今にも刀を抜くんじゃないかと思うくらい不機嫌そうな表情を浮かべていた。

「名前こっち来なせぇ」

手を引っ張られ、沖田さんの隊服のスカーフでさっき銀時にキスをされた額や頬をごしごし拭われた。


「ちょ、失礼だな!つか名前って名前知ってんのな、夜神総一郎君?」
「デスノートがあったら1番に旦那の名前書いてやりまさ」



二人があまりにも険悪なので、銀時に別れを告げて、沖田さんの腕を慌てて引っ張った。

「沖田さん、さぁ帰りましょう〜」
「名前、お前過去のこと全部話しなせェ」
「え?」
「旦那との関係も、なんで真選組に入ったのかも、全部でさぁ」
「‥はい?」
「明日非番だろ?終わるまで寝かせねぇ」


闇夜に沖田さんの赤い瞳がギラギラと恐ろしく光って見えた 。





つづく


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