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部屋に戻って、沖田さんの部屋の布団を片付けた。
さっきまでこの布団で二人で寝ていたのかと思うと少し恥ずかしくなり、布団から香る沖田さんの匂いにまた顔が熱くなった。
(最近の私、何か変だ)
自分で必死に気づかないようにしているが、そろそろ限界を感じていた。
沖田さんを見ると変な緊張が走る。
嬉しいような、悲しいような、触れたいような。
色んな感情が一気に混ざり合い身体中を巡るのだ。
「何、百面相してんでさ」
「わ!」
沖田さんが帰って来た。
私の顔を覗き込む。
ちょうど沖田さんの事を考えていたところに本人が現れ、慌てて視線をずらした。
「か、会議長かったですね」
「ん、あんまいい内容じゃねぇでさ」
「え?何かありました?」
「……ちゅーしてくれたら教えまさ」
「は?」
言ってる意味が分からない。
「何言ってるんですか?」
「ちゅーして下せぇ。何かちゅーして貰わないと元気出なさそうなんでさ」
「はぁあ?」
おかしい。
沖田さんが何故だか弱気だった。
「どうしたんです…ッ」
腕を引っ張られて押し倒された。
沖田さんのまぁるい瞳が私を見下ろす。
「また百面相してら」
「…ん」
沖田さんは本当にキスをしてきた。
甘くて、少し乱暴なキスだ。
「あっ、ちょ…っと、」
「逃げないでくだせぇ、命令にしやす」
「っん」
「名前」
沖田さんは長い睫毛を揺らしながら何度もちゅ、ちゅ、と唇を落とした。
沖田さんは狡い。
命令なんて言われたら逆らえない。
抵抗をやめるとどんどんキスは甘くて深くなった。
くすぐったくて、ふわふわ気持ちよくて、とろとろとお互いが混ざっていく。
「…高杉」
沖田さんがポツリと呟いたその名前にそれまでの甘い感情が一瞬で消えて身体が強張った。
「高杉が江戸にいるみたいでさ」
ーーー
次の日は全体会議があった。
「高杉晋助が江戸に出没中との目撃情報が入った。皆知ってる通りヤツは危険だ。何としてもなにか起きる前につかまえる」
配られた高杉の指名手配の写真を見て少し笑えた。
すっかり有名人だ。
沖田さんは不機嫌そうに近藤さんの横に座っている。
「見かけたらまずは屯所に通報するように。一人で深追い等はしないこと」
会議が終わると沖田さんは私に呟いた。
「何か嫌な気がしてならねぇ、お前…分かってんだろうな」
「…分かってます。変な気なんて起こしません」
沖田さんはふん、と言って立ち去った。
いよいよ高杉をつかまえる時が来るかもしれない。
今は一人じゃない。
沖田さんが、真選組のみんながいる。
大きく深呼吸をしてから指名手配の写真をポイと、ゴミ箱へと捨てた。
この時、私は心の底から大丈夫だと思っていた。
いくら高杉が強くても、鬼兵隊くらい、みんながいればつかまえられる。
そうやって、なんだか無敵な気持ちでいたのだ。
つづく
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