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結局沖田さんとまた一緒に寝ることになった。
この間は沖田さんの部屋で。
今日は私の部屋で。
沖田さんと布団に潜ると、来い来いと手招きをされる。
腕枕をされて正面からぎゅっと抱き締められた。
「っ…」
沖田さんの顔が近い。
おでこに顎をくっ付けられて、少し安心した。
(良かった、これなら顔を見られない)
多分私はまた百面相をしている。
見られたらからかわれるにちがいない。
視界には沖田さんの首。
強く抱き締められて、沖田さんの喉仏に私の鼻がぴたっとくっついた。
呼吸をするたびに首元から沖田さんの香りがした。
「お前の匂いがする」
「え?」
同じような事を思ってたみたいだ。
「私は…沖田さんの匂いがします」
「…ふぅん」
沖田さんはそう言いながら私の頭から髪を掬いとっては、しゅるると指を通した。
「…最近余裕ないんでさ、わりぃな」
「っ…」
沖田さんからまさかの詫びの言葉が来た。流石にやりすぎたと思ったのだろうか、こんなこともあるのか。
「…もう、沖田さんに悩まされるのは慣れました」
そう答えると沖田さんはクックッと笑った。
そのまますっと顔を私の目の前に下ろしてきた。
「…やっぱり百面相してら」
いじわるそうに笑う沖田さんの高い鼻が私の鼻とぶつかる。
ひんやり冷たい感触がした。
そのまま唇を重ねる 。
瞳は自然と閉じていった。
「…」
今まで散々された無理矢理のキスではない、とても静かな、自然なキス。
しん、とした部屋の中で、ただ心臓の音だけがバクンバクンと鳴っていた。
何でか私は泣きそうになり、目が潤む。
口から好き、という気持ちが出そうになるのを必死に止めた。
まだ、言う時ではない。
自分の気持ちを伝えるのは、高杉の件が終わったらだ。
沖田さんは珍しく黙っていて、伏せがちに長い睫毛を揺らしていた。
照れ臭くて何を話していいか分からず、そのまま何も言わずに甘い体温に包まれながら眠りについた。
つづく
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