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その日の夜、銭湯からの帰り道だった。
ふと流れてきた煙の匂いが鼻をかすめた。
「…っ」
知っている。
私はこの匂いを知っている。
高杉の、キセルの匂い。
バッと煙が来る方向を見ると
お訪ね人とは思えないくらい当たり前のように、そこに高杉は立っていた。
「った、か…」
私の見開いた目を見て高杉はニヤリと笑った。
「ちょっと来いよ」
そう言ってふぅ、と煙を吐く。
それと共に私の大好きだった、高杉の匂いが広がった。
高杉は無言だったが、仲間に連絡しようものならすぐ切ってかかってくるだろうことが、放つ空気から分かった。
すぐそこの路地裏へと入り、高杉は立ち止まる 。
「幕府の犬っころ、お前にいい話をしてやらァ」
嫌な予感しかしなかった。
背筋にゾッと寒気がはしる。
「真選組の屯所、潰してやんよ」
高杉の言葉に頭が真っ白になった。
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長夢
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