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屯所を出て約束の場所へと向かう。
「‥何してるんでさ」
「っ」
夜道の街灯の下に沖田さんが立っていた。
「お前の部屋に手紙があったんだけどねィ‥これはお前の返答次第で切り捨てて見なかったことにしまさ」
「沖田さん、勘が鋭すぎますよ、本当に‥」
「質問に答えろィ」
「‥見逃してください」
沖田さんは刀を抜いた。
見逃してくれるような人ではない事は分かっていた。
自分も腰の刀に手を伸ばす。
「高杉んトコかィ?」
「切腹は、次に会った時します」
「行かせるわけねぇだろ!」
刀と刀がぶつかった。
私の刀は沖田さんの顔正面を狙ったが直前で避けられ、沖田さんの頬を掠めた。頬から血が流し、沖田さんが舌打ちをする。
「チッ、名前テメェ‥」
「ごめんなさい、普通にやっても敵わないんで。本気で命、狙っていきます」
「お前がオレに敵うと思ってんのかィ」
勿論、普通に考えれば私の腕では沖田さんに勝てるはずはなかった。
しかし沖田さんは私の足止めが目的だ。
それ故、殺さないようよう剣の動きにどうしても制限が生まれる。
逆に私は自分が本気で戦ったところで沖田さんなら死なないのは分かっていた 。
つまりこっちは全身全霊の力を持って戦える。
動きを制限する沖田さんと、殺す勢いの私なら、私の方がずっと有利だった。
「っ」
沖田さんの刀が私の腕を捉えた。
ざっくり切られた腕から血がドクドクと流れ出る。
「沖田さん、そっち利き手じゃない」
沖田さんの刀を切られた左手でそのまま抑え込み、私は残った右手を大きく振りかぶった。
「ごめんなさい」
「っ、‥」
今沖田さんは私の左腕じゃなくて心臓だって狙えたはずだ。
でもやっぱりそれを、しなかった。
私を信じてくれる気持ちを逆手にとった、最悪の勝ち方。
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長夢
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