1
ー24話
慌ててベッドから出るが裸だということを思い出す。
一瞬戸惑うと高杉が着物を投げた。
「‥高杉」
「行けよ」
「‥」
「あんなしつこい連中といざこざ起こしてまでお前ェなんざ必要としてねぇよ」
高杉は言葉とは裏腹にとても穏やかな顔をして笑っていた。
高杉の笑顔を見て、何で高杉が私を再び呼び戻したのかやっと分かった。
高杉は最初から、いつまでも過去の高杉に囚われていた私の呪縛を解くつもりだったんだと思う。
自分の事なんか早く忘れて、新しい人生を歩め、と伝えたかったんだ。
高杉は私の腰に手を回し、先ほど投げてきた着物を着せてくれた。
昔もこうやって抱かれた朝は着付けをしてもらっていた。
薄い紫色に金色の模様が入った着物。
それはとても綺麗で、ずっしりと気高くて、でも儚そうな花が舞っていて。
自惚れかもしれないけど、多分高杉はこれを私に渡そうと、ずっと大切にしまっておいたんだろうと思った。
高杉の手つきはゆっくりと丁寧で、もう私はこれに触れることはないのだろうな、とぼんやりとその大きくも華奢な手を見つめた。
「おら、これでいいだろ」
「‥ありがとう」
「礼を言われる筋合いはねぇよ」
「ううん、ありがとう」
私は高杉の包帯をしゅるり、とほどいた。
高杉の綺麗な顔と潰れた左目。
何度愛しくこの顔に触れただろう。
一体どれだけこの人を想っただろう。
「‥名前、お前ェ変な男に引っかかんなよ」
高杉は優しくポツリと呟いた。
「どうかな」
「刀は持たねぇヤツにしろ」
そう言って私の刀を渡してくる。
カチャ、という音と共に金色の鍔が反射でキラリと光る。
「‥ごめん。それは無理かも」
私は笑ってそれを受け取り、走って部屋を出た。
ゆっくり歩いていると振り向いてしまいそうだったので、全速力で走った。
今、高杉はどんな顔をしてるのだろう。
多分優しくて、きっと少しだけ安心した顔をしてるはずだ。
通路を走りながら窓の外をみる。
濃紺の宇宙を背景にキラキラと流星が数えきれないほど流れていた。
流れ星がこれだけあれば願い事のひとつぐらい叶うはずだ。
(どうか‥高杉が、幸せになりますように)
泣くもんかと歯を食い縛り上を向きながら走ったが、結局涙はぼろぼろと落ちていき、それが星屑のように道に跡を残していった。
前/次
戻る
長夢
TOP