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「あの」
「何でィ」
「どうしてここにいるんですか?」
「問題あるかィ?」
屯所に帰ってきて沖田さんは先日出来た壁の穴から私の部屋に当たり前のように入ってきた。
「目の前に疲れてる上司がいるんだけど、お前何かしてくれませんかィ?」
「何かって」
「布団を敷くとか、マッサージとか」
「‥はぁ」
「ホラホラ早く。これだからゆとりは」
「沖田さんとオレ、そんな年違わないですよね」
「昼飯まで寝まさァ」
この人はここで寝る気満々のようだ。
よいしょ、と言われた通り布団を敷いた。
沖田さんはふぃー、と布団にくるまった。
「あ、腰揉んでくだせぇ」
「はいはい」
うつ伏せの沖田さんに跨がり腰を押す。
この人顔はいいのにちょっとおじいちゃんみたいなとこあるんだよな。
今も「効く〜」とかいってウトウトしている。
「お前の布団なんか匂いまさ」
「え、くさいですか?」
「イヤ、女の‥匂い」
「え!?まさか!そんな‥」
「女連れ込んだら切腹ですぜィ」
「イヤイヤイヤ、そんなことしませんて!本当に!本当の本当に!」
恐ろしいことを言われてしまった。女の匂いって、この人は敏感なところがある。
ウトウトしていた沖田さんはマッサージを続けていたらそのまま寝てしまった。
黙っていればただの可愛い少年なのにな‥と寝顔を見て思う。
「昼飯の時間ですよ」
「ん、」
「起きて下さい、おじいちゃん」
「‥誰がおじいちゃんでィ」
「あ、いや、沖田さんって言ったんです。違います」
「なんか、お前って本当に馬鹿でさ」
目をこすりつつ沖田さんは布団から出る。
そして欠伸をしつつ隊服を脱ぎはじめた。
「‥オイ」
「はい」
「なに、赤くなってるんでさ」
「え、オレ‥赤いですか?」
「お前、マジのあっちの人なんですかィ?」
「いや、ま、まさか」
沖田さんの肌は白く、でもしっかりと筋肉がついていて、やはりいくら鍛えたところで男にはなれないと痛感させられた。
それと同時に細いと思っていた沖田さんがこんなにも男の身体をしていると思っていなかったので、不覚にもそのギャップにドキンとしてしまった。
上半身裸になった沖田さんは何故かジリジリと距離を詰めてくる。
咄嗟に後ずさりをするが、ついに壁際まで追い詰められてしまった。
「ち、近いですって」
「いや、赤くなって面白れぇから」
「なってませんて!もう何なんですか!?」
「男装は本当に分かってないでさ」
「な、何をでしょう‥」
沖田さんの顔が近い。めっちゃ肌キレイなんですけどこの人。
沖田さんの手が私の髪に触れた。
どうしよう、ベタベタしてくるとは思っていたが沖田さんは本当に男の人が好きなのだろうか。
なんだろう、ものすごく‥いけない気分なんですけど‥
自分の耳が熱くなっているのがわかる。
それに気付いたのか沖田さんは手を髪から耳に滑らせクリクリ〜と触ってきた。
「ひっ、く、くすぐったいんですけど」
「耳、赤いですぜ」
「いや、ちょっ‥やめっ、ひゃ」
「それにめっちゃ熱いでさァ」
どんどん顔を近付けてくる沖田さんに耐えきれず目を瞑った。
男として入隊したのに、こんな展開は予想してなかった。どうしよう、どうしよう、どうしよう‥
「とっとと着替え持ってこいって言ってるんでさ、このパシリ」
「‥え?」
沖田さんは慌てていた私の耳元で黒く笑って囁いた。
「なに期待してたんでィ」
この人は本当に恐ろしい。
恐ろしいドエスだ。
「お前が女だったらキスのひとつくらいしてやってもよかったんですけどねィ。すいやせんねィ〜」
呆然とする私に対して沖田さんは凄く楽しそうに笑っている。
「もーからかわないでください!!」
「ハハハ、本当に男装は面白いでさァ」
ケタケタ笑う沖田さんを見て少し転職を考えた。
つづく
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