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―4話
屯所には稽古場がある。
夕食前に男装はいつもそこで剣を振るっていた。
「おう、名字じゃねぇか」
「土方さん」
今日は先客がいた。
「総悟は一緒か?」
「え、知りませんよ」
「そうか。珍しいな」
「オレそんな沖田さんといるイメージですかね」
「だってアイツやたらお前にべったりじゃねぇか」
土方さんにも言われてしまった。
「お前の剣の腕に惚れてんのかもな。アイツもお前みたいな強いやつが来て嬉しいんだろ」
「惚れてるって‥」
「どれ、手合わせすっか」
「そんな!副長に稽古していただくなんて恐れ多いです!」
「いいじゃねぇか」
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土方さんと剣を交える。
剣にも人の性格がでる。土方さんの剣は武骨ながら、真選組を担う責任や信念など、色んな重みを感じた。
「お前どこで剣覚えたんだ?」
「えーと、昔知り合いに教えてもらって」
「そうか。何かお前っぽくないよな。結構乱暴だ」
「はは。乱暴なヤツに教わったんですよ」
土方さんと一汗かいたところで二人で縁側に座り込んだ。もう暗くなっていた。
はぁ、とついた息は春特有の浮き足だった夜空へと消えていく。
桜がちらほら咲いていた。
「土方さんの剣はやっぱ土方さん、って感じでした〜」
「なんだよそれ」
「もう凄い重圧で‥オレ手が痺れてますよ」
そう言って手をヒラヒラさせると「どれ」と土方さんに手を掴まれた。
「んだぁコレ。お前手も小っせえな」
「え!?いや、そうですか!?」
突然触れた手にびっくりしてしまう。
「オレ手汗がやばいんで、」
小さくひ弱な手で女とバレてしまうんじゃないかと、慌てて手を引っ込める。
「あ?いちいち気にしねぇよ。男なんだからよ‥」
「あ、そうですよね。男。男‥」
もう午前中の沖田さんといい、男の人って難しい。裸体も手汗も、こういう中途半端なスキンシップも気にしないなんて、本来女の私には難しすぎる。
道場に月明かりが差し込んできた。
土方さんの顔が照らされる。
「土方さんって格好いいですよね」
「は?」
「あ、えっとなんかモテそうだなって」
「お前こそ可愛いツラしてモテんだろ」
「いや、オレなんて全然‥」
「そうか?お前本当、総悟より女っぽい顔して‥」
顔を覗きこまれて目が合った。
一瞬顔の熱が上がってしまう。
「な、な、何赤くなってんだよ!?」
「いやいや!だって土方さん凄い目ェ見てくるから!」
「こんくらいで何だよ!?こっちがビビんだろーが!」
私に釣られて土方さんも焦っていた。
その時いきなり土方さんが遠くに突き放された。
「おいマヨネーズ。何頬赤らめてんでィ」
「お、沖田さん!?」
「あ、赤くなってねーよ!」
「いや、赤いですぜ」
「うるせー元はと言えば名字が先だろ!」
「なに二人していちゃついてんでさ。土方さん、うちの隊員たぶらかされちゃ困りますぜ」
「お前バズーカ向けんなっ」
「冥土の土産はマヨネーズでいいかィ」
「おい名字止めろー!」
いつもひょっこり現れる沖田さん。神出鬼没すぎる。
「男装も覚えておきなせぇ」
よく分からないが沖田さんの怒りをかってしまった。
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