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―5話

「で、名前も住所も教えてくれねぇのか」
「まぁ、人助けしただけなんで無理に調べなくてもいいんですけどねィ」


屯所で近藤さんに報告をした。
さっき通報があって連れてきた女の件だ。
総悟に泣かされて、今は屯所の空き部屋で休ませている。悪いと思いつつ部屋には外側から鍵をかけてある。


確かに悪いようなヤツには全く見えなかった。悪人というより、子どもらしさが若干残った箱入り娘のように見える。
ただそれ故にあんな娘が護身用の刀を持ち、それであの生物を切ったなんて少し信じられない。柳生家の箱入り娘に似たようなものなのだろうか。

「土方さん、何黙ってるんでさ」

モヤモヤと一人で考えていると総悟に話しかけられた。コイツも何か引っ掛かてるようだ。

「あのバカ王子のペットよぅ、切り口がなんかプロっぽいんだよな。急所をあえて上手く外してるっつーか」
「それはオレも思いやした」


ただの人助けの案件だが、何故だかあの女が引っ掛かる。警察の勘というかなんというか‥


「それにあのお嬢さんの髪飾り、相当高いヤツですぜィ。ありゃ宇宙宝石の本物でさァ」
「まじか!?」
「やっぱアイツ武家の箱入り娘とかなのか」


うーん、と近藤さんは考えた。

「しかし泣くほど帰りたがってるのに可哀想だよなぁ」

確かにあの娘の泣き顔を見ると罪悪感で胸が締め付けられた。

人助けをしたのにも関わらず、こんな見知らぬ所に一泊軟禁されるなんて、正直たまったもんじゃないだろう。
しかしハタ王子の手前、こちらの立場として軽く釈放するわけにもいかなかった。



「まだ泣いてるのかなぁ。トシちょっと様子見てもっかい話を聞いてみてくれよ」
「優しくするんですぜ。土方さんのフォローの力で心を開いてもらうんでさァ」



これだよ。
二人は面倒なことがあるとすぐこうやってオレに押し付けてくる。


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長夢
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