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―6話

困った。
夜になってしまった。

晋助達はもう帰ってきてるだろうか。
私がいないことにどう思っているだろうか。

皆で暮らす住みかは定期的に越している上に、あまり外にでない私は、明日釈放されても恐らく帰り道が分からないだろう。

先を考えると不安しかなかった。

しかしそんな不安よりも、晋助の敵である真選組の本拠地なんかに1秒でも長くいたくない、という嫌悪感の方が強かった。

土方という男はちょいちょい顔を出して話をしてきたが、晋助の一番の敵である事が分かった。絶対に気を許してはいけない相手だ。

土方がタバコに火をつけた時、晋助のキセルの匂いを思い出して胸が辛くなった。
あの晋助がゆっくりふかすキセルに比べて、このタバコはどうしてこんなに煙たいんだろう。




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夕食が運ばれてくる。
しかし食欲はわかなかった。



「ちょっとくらい食えよ」と食器を下げに来た土方に言われたが無視をした。


「なぁ」
「‥」
「名前の目、金色なのな」
「え?」
「満月みてぇ」
「‥‥そんなこと初めて言われた」
「えっ、そっ、そうか。今日満月だからよォ、つい」
「満月‥」
「見てみろよ」


土方に指差され窓を見た。

真っ黒に塗られたような闇のなか、金色の満月が目に入ってきた。
それはまるで暗闇の中、唯一それだけが存在を許されたかのような堂々とした美しさであった。

江戸中の人々が今宵の月を見上げているだろう。
きっと晋助も見てる。


名前は満月をみてゆっくりと目を閉じた。



(お月様が私の居場所を伝えてくれたらいいのにな)


少し涙で重たくなった瞼をゆっくりと開いた瞬間、小さく声が聞こえた。



「何してんだよ、お姫さん」
「‥え?」


ドクンと心臓が鳴った。


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