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―7話
「そ、そろそろ離してよ」
「オレがお前の言うことを聞くと思うか?」
晋助に抱き抱えられたまま江戸の屋根を走り抜けた。
月に照らされた晋助の横顔が視界に入る。風が吹く度に晋助の匂いがした。
先ほどの出来事に心臓がまだドクンドクンと高鳴っている。
真選組の屯所から幾分離れた小屋までと連れていかれた。
恐らく潜伏場所のひとつだろう。
晋助は江戸中にこのような潜伏場所を持っていた。
この小屋に電気は通っていなかった。窓から入る月明かりしか灯らない部屋の中、晋助は私の身体を未だに離さずいた。
しん、と静まり返った小さな部屋の中で抱き締められ、晋助の心臓の音がじかに聞こえた。
その鼓動は早く、普段冷たい晋助の身体は、闇の中を私を抱えて走り抜けたせいか温かかった。
「おうちに帰らないの?」
「バカ。しばらく待機だ」
「え?」
「真選組にずらかった方向見られてんのに真っ直ぐ家に帰るわけねぇだろ」
「そっか、ごめんね、真選組なんかにいて‥」
「あ?聞こえねぇな」
「‥ごめんなさい」
「二度はねぇぞ、ガキ」
ぺしんと晋助は私の頭をはたいた。
「ねぇ、どうして場所がわかったの?」
教えてほしかったのに晋助はニヤリと笑っただけだった。
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