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―8話
真選組の屯所から逃げてきて数週間が過ぎた。
あれから晋助を見るとずっと胸が苦しい。
もしかしたら私は胸の病気でこのまま死んでしまうのかもしれない。
朝方すずめの鳴き声で目を覚ますとすぐ隣で晋助が寝ていた。
いつも私の方が早く寝るくせに、私が起きた時にはもう晋助はいない事が大半なので、何だか寝顔をとても久しぶりに見た気がする。
(睫毛‥長いんだな)
晋助は珍しくクゥクゥと小さく寝息を立てている。いつもは偉そうで怖いが、今自分の隣で眠っている表情は何だか小さな子どものようだった。
「‥晋助、」
ポツンと名前を呼んでみる。
特に起きることもなく晋助の閉じられた長い睫毛を眺めていた。
それと同時にまた胸が苦しくなってくる。
ここ最近、私はなかなか晋助の顔が直視出来なかった。目が合うと息が出来ないのだ。
同じ部屋の生活なんて絶対に無理だとまた子の部屋に逃げたが、呆気なく連れ戻されてしまった。
かといって晋助はあれ以来また私に手出しをすることはなく、たまにチョコレートをくれるくらいだった。
前回自分の晋助に触られたいという欲求に気づいてしまった私は、一体この気持ちをどうしたら良いものかともて余していた。
自分から晋助に抱きつく勇気もない。
昔はよくあんな平然と抱きついていたなと、過去の自分が嘘のようだ。
「ん?‥今何時だ?」
「わっ」
晋助の顔を眺めていたら、いきなりその瞳が見開き驚いた。
晋助は寝ぼけながら頭をかいている。
「んだよ、まだ5時じゃねぇか」
「そ、そう?」
「こっち来い」
「え!」
手首を掴まれズリズリと晋助の布団に連れ込まれてしまった。
「ちょ、ちょっと」
「ん、もっかい寝るわ」
首に腕を回されて抱きしめられてしまった。
晋助の唇が私の額にあたりくすぐったい。
何分もたたないうちに晋助はまた眠ってしまった。
当たり前のように同じ布団で寝ていたあの頃とは、もう全然違う。
(どうしよう、ずっと、
ずっと、このまま抱きしめられてたい)
気づいたら自分も寝ていた。
隣に晋助はもういなかったが、晋助の匂いが残る布団にまた潜り込んだ。
(嗚呼、私本当に病気なのかもしれない)
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