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―9話
部屋に戻ってからもそわそわとしていた。
晋助が食事を終えて帰ってきたら困るのでお風呂へと行った。

風呂場にて身体を洗う。
自分はいつからこんな身体つきになったのだろう。

髪の毛もいつのまにこんなに伸びたのだろう。



この時間は多分晋助は皆と麻雀やら作戦会議やらしているはずだ。
晋助がいない内に先に寝よう、とそそくさと風呂からあがり部屋のドアを開けた。


「げ」
「げって何だよ、ガキ」

最悪だ。晋助は部屋にいた。
晋助もお風呂に入ったのか髪を濡らしていた。
適当に着た着物から晋助の白い肌が見えて目を逸らした。


「髪、濡れてると風邪ひくよ」
「クク。口うるさくなったもんだな」
「うるさくないって‥っちょっと触んないでよ!」
「なに顔そむけてんだよ。こっち見ろ」

顎を掴まれてグイッと目を合わせられてしまった。晋助の髪から滴がしたたり、私の頬にポタリと垂れる。

「っ〜やだ」
「顔見せろよ」


抵抗するが晋助の力に敵うわけもなくそのままグイグイ顔を近づけられた。

「クク、ほんと真っ赤だな」
「こ、これは病気なんだって!」

晋助は笑いながら顔を覗きこむ。

「へえ。病気、ねぇ」
「っ‥」

こんなに嫌がってるのに楽しそうに私を押さえつけてくる晋助は本当に意地悪だ。


「オレに触ってほしいか?」
「っ、ま、、ままさか」


嘘だ。
本当は触ってほしい。

普段乱暴で酷い言葉ばっかり言うが、触れる時は優しいことをもう私は嫌というほど知っている。


ほら、今もふんわり私の頬に落ちた滴を撫でる。


「お前、ほんとひねくれたガキ‥」
「っん」


ゆっくり上から唇を重ねられた。
その瞬間それまで強ばっていた身体の力が抜けてしまう。
そのまま晋助にぎゅうと抱き締められた。


「最初から大人しく力抜いときゃいいんだよ」
「‥ふぁ、」



繰り返しされるキスを受け入れながら目を瞑った。
晋助がゆっくり私の髪を指に絡めとる。
それと同時に苦しかった胸もほどけていった。

苦しく塞いでいたものが消えていき、代わりに胸にトロトロした温かいものが占めていった。
それがどんどん溢れこぼれていく。

嗚呼、甘い‥


なんだ、本当だ
これが恋なんだ


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