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「あ、みんな‥」
「何だテメーら。今取り込み中だ。消えろ」
「さ!帰ろ、帰ろ」
「おい!オレを無視すんな!その女はなぁ‥」
「この女はオレらの依頼人だから」


坂田さんは土方の手を払いのけて、無理矢理私を掴み上げバイクの後ろに乗せた。

「そうネ。名前は何でもないただの依頼人アル」
「そうです。何でもないただの依頼人です」
「うっせぇな。コイツを見逃す訳にゃいかねーんだよ」
「あ!!!ヅラだ!」
「あぁ!?」
「ヅラが爆弾持って走ってるネ」
「早く追わないとテロ起こされますよ」
「くそっ、桂!こんな時に‥おい、そこから逃げるなよ!」


遠くで長髪の男の人が笑いながら爆弾を持っていた。土方が舌打ちをしてその人を追う。
逃げている人はなんとなく手配書で見たことがある顔だ。


「逃げるなって言って逃げないやつはいないネ」
「ほら、ヅラが時間稼いでる間に行くぞ」

坂田さんはバイクに素早く乗り込んた。


「あの人は!?」
「大丈夫大丈夫、アイツ逃げるの得意だから」
「逃げの小太郎ですもんね」
「頼んで良かったアル」
「電波馬鹿もたまには使えるな」



ぶろろろ、とエンジンがかかりバイクが発車した。
坂田さんに掴まりながらふと後ろを振り返ったが、もう土方は遠くに去っており、景色だけがぼんやりと遠のいていった。


(鬼の副長‥か‥)


もしも晋助じゃなくてあの人に拾われてたら‥今私は何をしていたのだろう、と少し考えてしまう。
しかし想像が全くつかないのと、何となく罪悪感を感じたので、その空想をバイクのエンジン音でかき消した。




ーーーー



万事屋の3人は丁寧にも家へと送ってくれた。

「とりあえず外はあぶねぇからここにいろよ。ここが一番安全だろ」
「‥ありがとうございました」
「高杉もとりあえず生きてるって分かったし、まぁその内帰ってくるさ」
「‥はい」
「名前と離れたくないネ」
「神楽ちゃん、離れなきゃ駄目だよ」
「また高杉には内緒で遊びに行くわ」
「是非来て下さい」
「私も行くネ!」
「その、あんま気にすんなよ。天人とか、そういうの」
「‥晋助が帰ったら話してみます」
「そうか」
「捨てられちゃうと思うけど晋助に隠し事とか、できないし‥」
「万が一よ、万が一だよ。行く宛なかったら、また万事屋に顔だせよ」


坂田さんはポスンと私の頭に手を乗せた。
この人は鬼平隊にいるどの男の人とも違う。

こんなに角のないまぁるい性格でふわふわした男の人もいるんだな、と初めて知った。
目の前に下がった着流しからまた甘い匂いがする。
その匂いにそれまで抱えていた緊張が何だかほぐれて少し笑えた。

「坂田さんって、イチゴ牛乳みたい」
「何それ」
「はは、今日はありがとうございました」



今日あった出来事が全部夢のようだ。

あれだけ晋助の帰りを待っていたのに、
今は怖くて帰ってきてほしくない気持ちの方が強くなっていた。



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