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部屋のドアを開けると晋助がいた。
私のまとめた荷物を見つめて立っている。


「あ、それ‥」
「‥話したいことっつーのは銀時と駆け落ちでも決め込むってことか?」
「ち、違うよ」


晋助はこちらを見ない。


「こ、この前万事屋さんで晋助の知ってる人に会って‥その‥」


鏡台に自分の姿がうつって見えた。
瞳の中の金色の光が反射する。
その光が嫌で眉間に皺が寄った。


「わ、私‥げ、げっこう」
「月光族」
「え!?」
「月光族、がどーしたよ?」



晋助はニヤリと笑った。


「‥な、なんで」
「テメェのことは何でも知ってら、ガキが」


晋助は私の頬をむに、とつまんだ。


「‥ひゃあ、わたひのこと、ふてふ?」
「あ?」


私は頬をつまむ晋助の手を払った。
そこで自分の手が震えていることに気付く。


「じゃあ、私のこと、捨てる?」
「‥なんでそうなるんだよ」


晋助ははぁ、とため息をつき、懐から小さい箱を出した。

「やる」


開けると金色の石が入っていた。
その石はとろりと溶けそうなほど滑らかで、淡く柔らかく光って見えた。


「何‥これ、綺麗‥」


晋助は答えずに私の髪をくるりと指に巻き付け、じっと私の顔を見た。

(あ、キス‥する時の顔‥)

反射で顔が赤くなる。
晋助の顔が近づいてきた時、ドアの方から声がした。


「あ、これ月光石じゃん。探し物ってこれだったんだね」
「っきゃ!」


誰かに後ろから抱きつかれた。


「っ神威!死にてぇか!」


即座に腕を引き寄せられ晋助に抱き戻される。
視界に入ったのは神楽ちゃんのお兄さんだった。


「ごめんごめん、だってシンスケの女、いい匂いするんだもん。しょうがないじゃん月光族と夜兎はそういうもんなんだから」
「っチッ、どっから来た」
「珍しくシンスケが浮かれて見えたからこっそりついてきちゃった。こんなデレデレな姿が見れたから正解だったね」
「テメェここで死ぬか」


刀を抜く晋助。
神楽ちゃんのお兄さんをギロリと睨み付けた。


「し、晋助!駄目だって」
「おねーさん、いいこと教えてあげる」
「え?」
「月光石って月光族では結婚の契りをする時相手に渡すんだよ」
「け、け、結婚‥!?」
「チッ」


晋助は大きく刀を振りかぶる。
神楽ちゃんのお兄さんはそれをぴょん、と避けた。
次々に晋助からの一刀がくるが、それらを笑顔で避けながら話し続ける。

「月光族が絶滅したからその石ももうないって言われてたのに、よく探せたね。執念?」
「その口、引き裂いてやらァ」
「アハハ、シンスケ結構ロマンチストじゃん」


神楽ちゃんのお兄さんは笑いながら部屋を出ていった。
晋助は「逃がすかよ」と追いかけていく。


部屋に残された私はへなりと座り込んだ。




晋助は月光族のことを知っていた。
いつから?
でも、じゃあ、私は‥出ていかなくてもいいのだろうか?
捨てられることはないのだろうか?
天人の私でも、晋助は受け入れてくれるのだろうか?



色んなことが頭を駆け巡る。
晋助に聞きたいことが沢山あった。





‥晋助はこの石をどういうつもりで私にくれたんだろうか?







つづく


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