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ー12話

部屋に座って月を見ていたら晋助が帰って来た。
どうやら坂田さんと神楽ちゃんのお兄さんは帰ったようだ。


「‥風呂」
「うん」

いつものように晋助の着替えを出して渡す。

「たまにゃ一緒に入るか」
「っ‥え」

突拍子もない提案に嫌だと抵抗したが晋助にひょい、と持ち上げられ風呂場へと運ばれてしまった。

あっという間に腕を掴まれたまま着物を脱がされシャワーをかけられる。

「っ冷たっ、ちょ、まだ水なんだけど!」
「クク、おめーが浮気してねぇか身体中確認してやら」
「してないってば!」
「どーだかな、じゃじゃ馬姫が」

晋助は酷い言葉を言ってきたが、それとは裏腹に柔らかい手つきで髪を洗ってくれた。

先ほどまではムスッとしていたが、もう機嫌は治ったようだ。

洗い終わった私の髪をゆっくりと櫛でとかしている。

こうやって晋助と一緒にお風呂に入るなんて何年ぶりだろうか。
何だかよく一緒に入っていた昔を思い出す。
昔から晋助は何だかんだと私の面倒をよく見てくれた。
私にとって誰よりも一番自分に近い存在だ。

「晋助‥今まで育ててくれてありがとう」
「何だよそれ」
「‥私のこといつから知ってたの?」
「さぁな」
「天人なのに、私のこと嫌いにならないの?」
「どうだっていいさ。お前の身体がオレ等と大差ねぇこたぁオレが1番知ってら」


晋助はそう言うと私の身体に泡をつけた。そのままゆっくりと手を這わす。


「い、いいよ、自分で洗うから」
「うるせぇ」
「っひゃ、」

嗚呼もう、だから一緒に入りたくなかった。
こうやって明るいところで触られるなんて恥ずかしくて死にそうだ。


「晋助の身体は‥私が洗うから」

晋助の腕にしがみつき、せめてもの反撃で放った言葉も「それは上等だなァ」と一笑されて終わった。


晋助の身体には沢山の傷痕がある。
遠征に行く度に増える傷。
今回も新しい傷がいくつもあり、その傷をそっと撫でた。



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