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―3話


晋助の腕の怪我が治ってから一緒に買い物に出掛けた。

あれ以来晋助はからかうことはあっても私に触ってはこない。しかし同じ部屋で過ごしているのに未だに私は晋助の顔がちゃんと見れなかった。


久しぶりに二人で出掛ける。晋助がくれた髪飾りが歩く度にシャラシャラ綺麗な音を立てた。その音が心地よくつい早足になった。


「走ると転ぶぞ」

何だかんだ晋助は未だに私を子ども扱いする。


「大丈っ‥わ!」


後ろを歩く晋助に返事をしようと振り返った瞬間、人にぶつかってしまった。


「ご、ごめんなさい」
「いや、オレも」
「チッ」


ぶつかった相手に謝ると後ろから晋助の舌打ちが聞こえた。


「あれ、お前」
「いくぞ、名前」
「わっ」

晋助がバッと私の腕を掴み踵を返す。

「待てよ。オイ、高杉!」


私がぶつかってしまった相手はどうやら晋助の知り合いらしい。名前を呼ばれ晋助は心底面倒くさそうに足を止めた。


「なになに。この子お前のアレ?可愛いじゃん。でもちょっと若くない、ねぇいくつ?」
「銀時‥黙れ」


銀時と呼ばれたその男の人はニコニコ笑いかけてきた。不思議と甘い匂いがする。


「名字名前です。晋助がいつもお世話になってます」

銀時という人に深々と頭を下げた。

「わーご丁寧にどうも。オレのことは銀ちゃんって呼んでね〜」


銀時ならぬ銀ちゃんという人に握手を求められる。応じようと手を出そうとしたら晋助にピシャリと止められた。


「触んな」
「え、お前マジ?握手くらいいいじゃん。独占欲強すぎじゃね?」
「菌がうつる」
「ちょっと何その言い方!?そんな人をバイ菌みたいに言わないでよ」
「コイツはオレが拾ったからオレんだ」


晋助の言葉に顔が熱くなった。

何だか最近私は変だ。
晋助のことを考えるとドキドキする。
晋助の白い肌、綺麗な顔立ち、長い指、低い声、全部にいちいち胸が高鳴り顔が熱くなる。


「高杉‥お前、年下好きだったのな」
「クク、勝手に言ってろ」


行くぞ、と晋助に手を引っ張られた。晋助の手は冷たいのに繋いだ先から私は熱をもつ。


「銀ちゃん‥は仲間?」
「ただの腐れ縁だ」
「腐れ縁?」
「うっせぇな。詮索すんな」



ほらよ、とチョコを渡された。
晋助は私がチョコをあげれば言うことをきくと思っているらしい。



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