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晋助と手を繋いだまま歩く。
シャラシャラと髪飾りの音が聞こえる。

なんだかそれだけで胸がいっぱいになった。私もうこのまま死んでもいいなぁ、と夕暮れを見てボンヤリと考えた。


「アラ、晋さん」
「なんだお前か」


また晋助が呼び止められる。
甲高い声、赤い紅が引かれた唇、綺麗な着物。
遊郭の女の人だと分かった。


「随分可愛らしい娘さんを連れてること」
「拾った」
「ふふ、気まぐれね。今夜はいらっしゃるかしら」
「さァな」


待ってますから来て下さいな、そう笑って女の人は去っていった。


去り際香水の匂いが鼻をかすめた。
時たま早朝に帰宅する晋助から香るにおいと同じだ。


「‥‥‥‥」

何を話したらいいのか分からず無言で歩く。

別に晋助が遊郭に通っていることは何となく知っていた。驚くことは何もないはずなのに。

先ほどまで苦しかった胸は今は違う形でキリキリと痛んだ。私は胸の病気なのかもしれない。


「クク」

うつむいていたら晋助の笑い声が聞こえた。

「本当ガキ」

晋助はクックッと笑いが堪えきれないようだ。

「何でよ」
「考えてることが顔にかいてあんぞ」
「え‥」


晋助は私の何が分かるんだろう。
私は私の考えてることが自分でも分からないのに。考えなんてなくて、ただ胸がキリキリと痛むだけなのに。


「私あの匂い嫌い」



悔しくて一言ポツリと呟いた。


つづく


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長夢
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