音柱の轟音

宇髄さんはどちらかというと苦手だ。すごく大きくて装飾がたくさんついてて迫力があって、話しかける時はすごく緊張してしまう。どうやって恋のお話を聞いたらいいんだろう。…そうだ、宇髄さんじゃなくて奥様方に話を聞くのはどうだろう。道すがらそんなことを考えていると、おい!と後ろから声をかけられた。びっくりして思わず固まってしまう。

「名前じゃねぇか!珍しい」

ああ、一番見つかってほしくない人に見つかってしまった…。ゆっくりと振り返ると、思った以上に近くに宇髄さんが立っていた。…デカイ。自分が心の中で想像するより一回り大きいのが苦手な理由でもある。

「相変わらず地味だな。甘露寺の使いか?」
「いえ、あの、奥様方は…?」
「あ?嫁は三人とも今いねーよ。立て込んでんだ」

…その展開は予想していなかった。まあ上がれよとずんずん進む音柱に、私は首を垂れてついていった。

屋敷に通されて、私はかくかくしかじかとこれまでの経緯を宇髄さんに話した。

「それで、奥様が三人もいる宇髄さんなら、恋について詳しいかと…」
「まあそれはそうだがよ、何でいの一番に俺のところに来ねーんだよ!派手に阿呆だなお前」

あなたが苦手だからです…とは言えない。地味呼ばわりの阿呆呼ばわりに何か言い返したい気持ちもあるが、図星をつかれてしまっては反抗のしようもない。

「だいたい冨岡も煉獄も色恋に関しては全く無頓着だろ。特に冨岡」
「そうなんですけどね…なぜか恋を探せと言われたときに最初に浮かんだのが冨岡さんの顔で」

そう言うと、宇髄さんの動きがピタリと止まった。その反応、昨日の蜜璃ちゃんと全く同じだ。私、そんなに変なことを言っているのだろうか。

「そうかそうか…」

ニヤニヤと笑う宇髄さんが、私を見ながら何度も頷く。

「だったらほら、あっただろ!こう、全身の血液がぶわーっと、心臓がぐわーっとする瞬間がよ!」
「え、なんですかそれ…」
「わかんねぇかなー?自分の感情が振り切れるっつーの?」
「鬼を切るときはそんな感じですが…」
「そんな物騒なもんじゃねーよ」

首を捻る私をよそにもうこの話は終わりだと、宇髄さんは私の首根っこを掴んでひょいっと塀の上へ放り投げた。いや捨て猫じゃないんだから…。

「もう見つかってるのも同じだろ。あとはお前次第だ」

放り投げた私に向かって、逆さまに映った宇髄さんはそう言った。

「よっと」

あとは私自身…ってどういうこと?昨日蜜璃ちゃんにも同じようなことを言われたということは、よくわからないけど、もしかして少しずつ恋に近づいているのではないだろうか。宇髄さんが見えなくなり無事に地面に着地すると、なんだか根拠のない自信に溢れてきた。

「あ、そうだ」

私は懐にしまっておいた紙を取り出す。蜜璃ちゃんは宇髄さんの屋敷の近くの甘味処をご贔屓にしていて、近くに行くなら寄ってきてほしいとお使いを頼まれていたのを思い出した。

「相変わらず多いな…」

桜餅にお団子におはぎに…数十個単位で注文がずらっと書かれてある。私は歩いてすぐのその甘味処で蜜璃ちゃんに頼まれたお菓子と、それからおはぎを四つ買った。


(201202)