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01 ある日、突然世界が変わってしまいました。
カーテンから漏れる明るい光に、起きる気もなかったのに目が覚めてしまった。
時刻を確認しようと思い、枕元に置いていた眼鏡を装着する。
携帯で確認をすると時刻は6時になったばかりだった。アラームは7時にセットしており、休日という事もあったので二度寝を、と思ったが目が冴えてしまったので、それもどうかと思い布団から離脱する。
電気ケトルでお湯を沸かし、顔を洗ったり朝食を準備したりしつつリモコンを使ってテレビをつけた。
「みなさーん!おはようございます!今日も始まりました……」
テレビからは早朝の時間帯にやるニュース番組が流れている。
朝からハイテンションなアナウンサーは、いつも通り元気いっぱいだ。
と言っても、世界線が変わってからのいつも通りで、以前は番組の名前も違っていたしこのアナウンサーを見た事もなかった。
私の世界は、やはり変わってしまったのだ。
あの日、山手線が東都環状線になってしまってから、呆然としながらも家に帰宅した。
きっと疲れているのだ。なんて現実逃避をして、いつも通り帰宅後は風呂に入り、食事をして床についた。
眠れば明日は元に戻っている。もしくは、自分は夢を見ていたのではないかと、寝て夢から覚めるのを期待した。
当然ながら翌日に目を覚まして、会社に行こうと山手線を目指すがそこにあるのは見覚えのない文字の羅列。東都環状線。
無視を決め込み会社に到着して何も変わっていないことを確認し、安堵の息を吐く。
やはり、見間違いだ。もしくは盛大なドッキリでも仕掛けられているに違いない。
誰かが急にきて「ドッキリでしたー!」なんて、看板と共に登場してくるはずだ。
……そのはずだった。
『あ、先輩!昨日のヨーコちゃんの番組見ました?!』
後輩のその一言で、現実逃避は失敗に終わった。
「……それでは今日もこの方に登場していただきましょう!沖野ヨーコさんです!!」
焼きたてのトーストに噛り付いていると、テレビから現実逃避失敗の原因である沖野ヨーコが登場した。
それを眉を顰めて見て、大きくため息を吐く。
彼女は芸能界でトップを走る、超人気アイドル歌手である。
彼女は女優業やバラエティー番組、CMなど数多くの出演数を誇り、彼女の事を知らない人を探すのが難しいくらい有名で、尚且つ彼女の出る番組はどれも視聴率が高い。
だから、後輩の「番組を見ましたか」に咄嗟に反応出来なかった私はとてもびっくりされてしまった。
ドラマはあまり見ないがバラエティ―番組は好き好んでよく見ると、後輩には話したことがあった。
後輩の言う「ヨーコちゃんの番組」は、どうやらバラエティー番組だったらしく、当然私が見ているものだと思っていたのだろう。
実際にその番組の時間帯だったら普通にテレビを見ていた。
しかし、その番組に「沖野ヨーコ」が出ては居なかったのだ。
そもそも論だが、私のいた場所には「沖野ヨーコ」は物語の中の主人公で、現実世界には存在していなかった。
いつの間にか現実世界が変わってしまい、某ラブコメ漫画の世界に迷い込んでしまった私は、「ヨーコちゃんの番組」がやっている時間帯に”この世界にいなかった”のである。
結局、その番組を見れる訳がなく「番組を見たか」という後輩の質問に私は答えられなかった。
かなり挙動不審になった自覚があるのだが、後輩には何を勘違いされたのかドンマイという言葉を頂いた。