02
02 喫茶ポアロ
拒絶も出来ず彼にドナドナされ、店内へと入ることになった。
「いらっしゃいませ!」
元気な挨拶をされ、どうもと小さく返す。
ニコニコとした女性は、事前に予測していた榎本梓だった。
やはり、居るのか。と内心でため息を吐く。
彼女に罪はないが、居なければここが普通の世界だと認識できたのかもしれないのに、ガッカリしたけれど存在を否定したいわけじゃない。
むしろ否定するべき存在は、むしろ自分の方ではないのか。
チラリと店内を見てみたが、どうやら安室さんはいないようだ。
そのことにホッと一息吐く。
「梓姉ちゃん、こんにちは。」
「コナン君、いらっしゃい。」
……そうだ。
そうだった。
忘れてはいけない。
この隣に居る少年だ。
店に入るのを渋っていたところ、声を掛けられてしまったのだった。
先ほど入口で、黒ぶち眼鏡に赤い蝶ネクタイを付けた江戸川コナンが私に声を掛けてきたのである。
こんなことならさっさと店内に入っておけばよかったと今更ながらに後悔する。
恐らくポアロの前で立ち往生していた不審な女を見かけ、彼の探偵心に火をつけてしまったのだろう。ポアロに行くのだから、安室透や榎本梓との邂逅は予測していたが、まさかの江戸川コナンとは……想像だにしていなかった。
しかし普通に考えれば、ポアロはよく話の中に出てくるし、なんならポアロの上に住む毛利小五郎や蘭姉ちゃんやコナン君に出会う確率は高かったはず。
何より、彼は主人公である。
己の想像力の無さに心の中で涙を流しつつ、とにかく平静を装った。
「そちらの方は、コナン君の知り合いかな?」
「違うよ。お店の前で立ち止まってたから声を掛けたんだ。」
そうそう。
私とコナン君は知り合いじゃないですよー。
だから、もう放っておいてねー。
「お店に入らないのか聞いたら、入るっていうから。僕と一緒に入ってきたんだ!ね、お姉さん!」
「……あははは。その通りです。お邪魔します。」
乾いた笑いしか出ない。
わざとらしい子供らしい口調で(実際見た目は子供だが)喋っているが、これはこちらを何かしら疑っているのだろうか。
知っている事なんて、何もないのに。
むしろこちらが、私の状況を聞きたいですと言いたい所をグッと我慢する。
「あら、てっきり知り合いの方だと思ったんだけど。」
「違うよ。でも僕、お姉さんとお喋りしたいなぁ。」
「……え。」
……やっぱりそう来ます?
「それじゃあ、席にご案内しますね。」
「うん!梓姉ちゃんありがとう!」