02
断ろうとする間もなく、相席が決定した。
店に入るとき同様に拒否権はなく、案内されるがままに席に座る。
気分はドナドナだ。
いやいやいや、梓ちゃん。コナン君には聞いてるけど、こちらの意見も聞いてくれませんか?
聞かれたところで断る勇気は全くないけれども。
窓際に座り、首に掛けていたヘッドフォンを外した。
ついでとばかりに室内用の眼鏡を鞄から取り出し、かけている眼鏡と交換する。
眼鏡ケースは最近買ったお気に入りの一品もののハンドメイドの眼鏡ケースだ。
見ていると癒されるので落ちないようにテーブルの端に置き、鞄の上に外したヘッドフォンを置いた。
対面には小さな名探偵が探るような目をこちらに向けていた。
探られても出るものはなにもありませんけども。
ここに来たのはやはり間違いだったかもしれない。
後悔してももう遅いが、それならそれでこの時間を楽しもうと気分を入れ替えた。
店内には若い男性客が一人座っているだけで、ほかに客はいない。
BGMが微かに流れ、穏やかな時間が流れているように感じた。
店の中に充満するコーヒーの匂いがとてもおいしく感じるが、緊張からか大してお腹は空いていない。
さて、何を頼もうか。
テーブルにお冷が置かれて、メニューを渡される。
機会があるなら特性イカ墨パスタとやらを食べてみたい気もしたが、今日は食べられそうもない。
これ以降、このお店に来る予定もないので一生食べる機会は訪れないだろう。
コーヒーは苦手なので無難にアイスティーを注文する。コナン君はオレンジジュースを注文していた。
一息ついた所で、彼からの質問が飛んでくる。
「ねえ、お姉さんの名前はなんて言うの?僕の名前は、江戸川コナンって言うんだ。」
ええ、よく存じておりますが。
「私の名前は、苗字 名前って言うんだ。」
「じゃあ、名前さんって呼ぶね。」
「それじゃあ、私はコナン君って呼ぼうかな。」
無難な会話だ。
「そういえば、名前さんはどうしてポアロの前に立っていたの?」
「それは、ポアロに入ろうとしていたからだけど。」
ゆるやかに尋問がスタートしたようだ。
「でも、ずぅっと、立ってたよね?ポアロに入るならすぐ入ればよかったのに。」
「……ええ?そんなに立っていたかなぁ。」
ずぅっと、だなんて、言い方がいやらしい。
どうやら彼は私がポアロに入るか入らないか葛藤している際に、ずぅっと、見ていたらしい。
……そりゃ、ずぅっと、突っ立っていた私が全面的に悪いけれども。
どう答えたものかと思っていると、注文した飲み物を届けに来た梓も話に参戦する。
「それ、私も思ってました!」
「え。」
「ほら、店内から外が見えるでしょう?中々入ってこないお客さんがいるなぁって。」