逃げていた兄

『例えばお兄さんに関するある秘密を知ってしまったが故、あなたの命に保証ができないとなった場合、それでもお兄さんのことについて知りたいと思いますか?』

降谷さんから指定された時間に盗聴の管理を任されたかと思ったらそのスピーカー越しには降谷さんの声が聞こえた。まさか上司の声が聞こえると思わなかったので少し吃驚していると、その直後聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた。


『当たり前ですよ。』


みのりだ。妹のみのりの声だ。彼女は自分のことを本当に慕ってくれていた。俺からしてもとても可愛い妹だった。当時まだ中学1年生だった妹に何も言わず置いていくことを酷く悲しい思いをしたのも事実。両親からは「もうみのりの悲しい顔を見ていられないから言わせてくれ。」と泣かれたこともあった。

そんな愛おしい妹が、降谷さんと喋っている。

『死ぬかもしれなくとも?』
『はい。』
『その情報が嘘だったとしても?』
『それは許せませんが。』
『例え話です。』
『そうですね、例え話ですもんね。』
『ええ。もう少し例え話をしましょう。そうですね、じゃあ…その秘密を知ったのに、お兄さんがあなたに会いたくないと言ったら?』


会いたくないだなんてこと、降谷さんには言っていない。本当は会いたい。そりゃ会いたいに決まっている。でも今は会えないんだ。

でもきっとそれも承知の上で降谷さんは、こういう質問をしてくれているんだろう。俺は唾を飲み込み、その言葉を待った。


『でも、私はやっぱり会いたい。』


「っ…みのり…、」


『人目見るだけでいいの。ううん、見れなくても声が聞ければいい。お兄ちゃんが生きているって言うことがわかればそれでいいの。』


そうか、それだけでよかったのか。俺は何を怖がってみのりから逃げていたんだろう。途端に罪悪感が広がり、俺は唇を噛んだ。


『だから安室さん、お兄ちゃんの情報を教えて?』
『…だそうだ、風見。』

「え?」


え?