私は上司たちを信じている
※痛い表現に感じる描写があるかもしれません。
「ぶっ、」
「…くっ…、よ、よく似合ってるぞ。」
「〜〜笑ってんなあ!!」
時刻は23時。私と降谷さんと風見さんは車に乗り込んだ、私は化粧を全て落とし、野暮ったい眉毛とビューラーでまつ毛だけ上げ色の無いリップを口に乗せ制服を纏った。まさか26歳で制服を着るとは思わなかった。
「いや本当に怖いくらい女子高生だよ。」
「…辻川、お前すごいな。」
「何すかほんと、褒めてんのか貶してんのかわかんない。」
「記念に写真でも撮っとく?」
「降谷さんは携帯を破壊されたいんですか?」
冗談だよと笑われたけどほんっとうに恥ずかしいんだからこれから行われる潜入が嘘のようだ。
「無理は決してするなよ。」
「わかってます。」
「それと最後までさせない。…俺だってお前の体を触ったことないんだ。そんな下劣なやつらにお前を触らせて堪るか。」
「……。」
「安心しろ、俺や風見がいるんだ。お前は与えられた仕事だけに全うしてくれればそれでいい。」
こんなにも心強い言葉は他にない。私の不安な心が少し晴れた気がした。
「降谷さん、…お願いします。」
「ああ。」
「私も、…いえ、何でもありません。」
私も、降谷さん以外に触られるのは嫌です。その言葉は飲みこんで、指定付近に降り一人で歩くこととなった。大丈夫、私にはお二人がいる。それに誓った。公安に来るときに、日本に平和を、と。
「高校生がこんな時間にどうしたの?」
「…ほっといてください。」
絶対に成功させてあげよう。理事官から頂いたこのミッション。
やつらは直ぐに私に声を掛けてきた。
最初から怪しい人物についていくのは逆に怪しいということで声掛けにも避けるよう指示されていた。これ本当の高校生が現場にあったら大変なことだ。
「もしかして帰る場所ないとか?」
「…関係ないでしょ。」
「俺怪しい人じゃないよ。って怪しく見えるかもしれないけど、君みたいに夜を迷える女の子に声を掛けて救済してあげてるんだ。」
「…救済?」
「ああ、人生、ひっくり返してみないか?」
顔はあまり見えないけどそこまで年を取っている感じはしない。口調も怒鳴るような感じではなくどちらかというと優しい口調。もしこの人しか頼りがいないという状況なら、ついていってしまうのかもしれない。そんな少女の気持ちを踏みにじるなんて本当に悪徳卑劣だ。
「本当に?」
「ああもちろん。俺の家、すぐそこなんだ。少しお話でもしないかい?」
「…うん。」
「ありがとう。じゃあ行こう。」
私はその男についていく手前、腕に盗聴器と発信機を付けた。もちろん自分にもついているが、こいつに逃げられたときのためだ。念には念を。
そして辺鄙なところにあるアパートは一部屋だけ明かりがついており、そこの鍵が開けられた。そこには資料の通り男が4人ニヤニヤと私のことを見ていた。それだけじゃない、他にも女の子が1人、制服がかなり乱れている状態で寝転んでいた。体をぴくぴくとさせ生きているようだけど何が起こっていたのかは見るも同然だった。
「これ、なに?」
「何って、人に渡る前に俺たちで味見だよ。」
「…味見?」
「君はここに転がっている女より色気があって綺麗だ。きっと良い値で着くだろう。」
「おい!俺にも顔見せろよ!」
「顔なんてどうでもいいだろ、早くやろうぜ。」
「いやよく見ろ。大きな瞳に傷の無い肌、胸も申し分ない。」
「やめてっ、」
「嫌がる声も可愛い。あのおっさんとか好きそうじゃないか?この間小学4年を引き取ったあのおっさん。」
「あーでもそれにしては大人っぽすぎんじゃね?うわ、確かに可愛い。」
「残念だね〜普通に出会ってれば普通に付き合いたかったわ〜。」
「どうせ高校で彼氏もいてずっこんばっこんしてんだろ。」
男たちが順番に私を見て顔を、体を触り文句なり感想なり言っていく。これからされることが想像され恐怖が重なっていく。
「このまま壊れちゃうの、もったいないなあ。」
「何だよお前随分気に入ってんじゃん。」
「結構好きだよ、こういう雰囲気の子。」
「じゃあお前のおもちゃにしちゃう?」
「俺他で今夜探してこようか?」
「…そうしよう。君は僕専用にしてあげるよ。」
「っん、ゃ、」
声を掛けてきた男が突然とキスをしてきた。そして1人は外に出て行くのを確認し、もう1人に腕や足を紐で縛られるのを感じた。手馴れている様子だった。
「おい、痕つけないようにしろよ。大切にするんだから。」
「うっわ気持ち悪いなあ。君残念だね、こいつに好かれた女の子はみんな死んでくんだよ。」
「物騒なこと言うな。まだ4人しかしてないだろ。」
こいつら、殺人までやっていたなんて。私はキッと男を睨むとなんだその顔、と首を絞められた。息ができない、苦しい。本気だ。本気で殺す気だ。
「ゴホッ、ハァ、ハァ、」
「お前…本当に高校生?胆据わりすぎじゃない?」
「やめ、」
「まあいいや。おい、ナイフ。」
「はいはーい。」
そう言ってこいつは私の服や下着を容赦なく切り取り、馬乗りになった。ナイフはちゃんと置いてくれたようで恐らく直ぐに死ぬことはなさそう。大丈夫、きっとそろそろ降谷さんたちは入ってきてくれる。もう少しの辛抱だ。私は恐怖と戦いながらどんどん進まれる行為に目を瞑った。その時。
「警察だ!強姦および売春の疑いで逮捕する!」
「っ、」
「ハア!?おいやべえ、」
「逃げろ!」
馬鹿なやつ。4人で行ったって敵うはずがないのに。私は直ぐにナイフだけ確保し、倒れている女の子に声を掛けた。彼女は一瞬私を見ると涙を流して抱き着いてきた。
その後すぐに頼もしい上司たちが犯人らを確保し、別場所で待機していたであろう先輩方が彼らを連行していった。
「降谷さん、まずは彼女を産婦人科のある病院へ。それと、」
「辻川、これを羽織れ。」
「あ、っ…すみません。」
「君、大丈夫かい?我々は警察だ。もう安心していい。」
「っふ、ぁぁぁ」
その後すぐに救急車も駆けつけ、看護師の方に彼女を預けた。まだ10代の女の子には重い精神的な傷を負っただろう。私は心が苦しくなった。
「辻川、立てるか?」
「、はい、っあ、れ、…すみません、足に力入らなくて、」
情けない話、足ががくがくとしているところからして私もかなりの恐怖感でいたことが分かった。正直、そこに指が入っただけでも痛くて泣きそうだったし、乱暴に触られた分ところどころ赤く痣のようになってしまった。何だか自分がとても汚い気がした。
そんな私を見て降谷さんは私の前に背中を向けて座った。
「あ、あの、」
「乗れ。とりあえずここから抜けるぞ。」
「っ降谷さんに背負っていただくわけには、」
「横抱きでもいいならそうするが?」
「い、いやです!…すみません、失礼します。」
私は残った力を振り絞り、降谷さんの背中に体を寄せた。大きな背中。ずっと見てきた。この背中が私にとっては誇りだった。降谷さんは立ち上がり、歩き出したところで私はその安心感に少し涙が出てきた。
「辻川。」
「は、はい。」
「俺のセーフティーハウスが直ぐ近くにある。そこで衣服など着替えると良い。」
「…つまり、そこに向かうということですか?」
「そうだ。」
「風見さんは、」
「風見はあいつらと犯人が乗る車に同行していったよ。」
「……。」
「今男と2人になるのは不安か?」
「い、いえ。…お願いします。」
不安なんかじゃない。そうじゃなくて、今はこんな私を降谷さんに見られたくないと思っていたところだったので少し気まずさが募った。