上司の期待に応えたい部下


【明日で今週も終わりだ。仕事後時間あるか?】

そう降谷さんから連絡が入っていたのは昨日の夜。私はそれに対してYSSと返事をし、今日そわそわと職場の椅子に座っている。ちなみにもちろん今日も降谷さんは静かだ。

話の内容は恐らくこの間のあれだろうなあ…。ああ失敗した。本当に何しでかしてくれてんだ私は。でも悔やんでも仕方ない。私は腹決めて言おうと決意した。

「降谷くん、少しいいか。」

「理事官だ…。」
「こちらに来るのは珍しいな…。」

周りがざわざわとする。何か急用だろうか、ここ最近平和な日々が続いていたため公安部に一気にピリッとした空気が広がる。

そして理事官が執行室から降谷さんと出て行き、じゃあ頼んだぞと言って公安部から出て行った。一体なんだったんだろう。しかしその後すぐに降谷さんが動いた。

「風見、辻川。少しいいか?」
「はい。」
「は、はい。」

風見さんと、私?なぜ?明らかに今までとは雰囲気が違うため少し怖いくらいに緊張していた。

「理事官からある計画を持ち寄られた。それをうちの部署で引き取ることにしたので、お前らに任務を証したい。」
「どういった内容でしょうか。」
「ある売春組織を見つけた。どうやらそこは未成年にも手を出しているらしく、被害も多く出ているらしい。その売春の現行犯逮捕をできるのが1番好ましいと上が決めたらしく囮役として辻川の名が出た。」
「…私が、」
「勿論俺は反対した。俺の部下をそんな危険な目に合わせられないと。…しかし、」
「それは理事官からのご使命なんですか?」
「…ああ。」
「なら理事官は私であればできると判断の上での指令何だと思います。だから降谷さん、やらせてください。」

勿論、怖くないわけじゃない。でもきっとこういった内容で対応できる女性警察はまず少ないし、その上公安に話が出たということはなるべく内密に終わらせたい案件だったんだろう。ここでは女は私しかいないし致し方ない。

私が、やるしかないんだ。

「いいのか?」
「…はい。」
「最悪なケースを考えると、最後まで致す可能性もある。」

恐らく、性のことを言っているんだろう。ハニトラまでは言わないが、きっとそういう場面になってからじゃないと突入できないと言うことだ。

「でも死ぬわけじゃないので。…そうなったら、そうなったまでです。」
「…一応聞くが、お前、経験はあるのか?」
「っは!?まってそれ聞く意味ありますか!?」
「辻川、」
「流れとかあるだろう。分かっている方がなるべく引きつけられる。しかしもし経験がないということであると、こちらもそれなりの対応をしないと本当に間に合わなくなるんだ。」
「……。」
「…すまない。無神経だっ、」
「ありますよ、大丈夫です。」

これでないと言ったら外されるんじゃないかと思った。…だって本当は無いから。もちろん男の子と付き合ったことはある。キスだってしてる。でも、…お恥ずかしいことに、そういう空気になるとどうしても恐怖心の方が勝ってしまいあれよあれよと26年経ってしまった。というか大学に入ってからは勉強ばかりでできなかったし、ここに入ってから出会いというものもなく、何となくずるずると処女を引きずっていた。でもこんなこと上司たちの前で言えるかっつーの。

「よかった。うっかり処女だったらどうしようかと思ったよ。」
「降谷さんにはデレカシーというものがないんですか。」
「悪い。これは避けたいとは思っているが、もし最悪のケースが下った場合は最中に突撃ということも十分に考えられる。ただお前もそんな姿見られたくないだろうから今回は少人数制で俺と風見の2人で形をつけよう。」
「…2人で大丈夫なんですか?」
「噂によると常習でやっているやつらは5名。それならば俺たち2人で充分いけるだろう。それに協力はもちろんつける。」
「分かりました。あと、…その、べ、別に気にしてないんですけど、…その、本当にしてしまう可能性は、どれくらいあるのでしょうか?」
「…五分五分、だな。」


五分五分。私は思わず降谷さんの目を反らした。

怖い。怖くて仕方がない。でも私はこの国の平和の為に、やるしかないんだ。


「大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫ですよ!」
「これが資料だ。今夜26時にやつらがここに現れると情報が回っている。辻川にはこれを着てその近辺をうろついてほしい。」
「…ちょ、まて。」
「何か?」
「降谷さん、やっぱり今の話無かったことに、」
「もう今更やらないとは言わせないからな。2人とも、資料を確認したら1時間は必ず仮眠をし、体調を整えろ。飯はこちらで宅配を頼む。以上だ。」
「ふ、降谷さああん!」

私は受け取ったセーラー服を見てこの案件を受けたことを激しく後悔したのであった。