不器用な兄妹よ

「降谷さん、ありがとうございました。」

感動的な兄妹の電話に立ち会ってから1週間。俺は組織の仕事を終えて警察庁へと立ち寄った。自分のデスクに行くと風見が待っていたかのように迎え入れた部下に対し、同じ妹にも感じた健気さを感じた。

「何のことだ?」
「あ、いえ…私の身内の件で手を回していただき感謝しています。」
「ああ、そのことか。俺たちはいつ死ぬか分からない立場に置かれているんだ、後悔するような邪念を消したかったまでさ。」
「はい。…あの、その後みのりから頼まれたりなどはしていませんか?」


風見は恐る恐ると状況の確認をしていることが伺える。風見はもう探すな、と言えどあの状況ならあの子は俺を頼らないわけがない。それは俺も分かっていたし、きっと風見だってそうであれという願望なだけで気が付いているだろう。

「そういえば安室の携帯にすごい量の連絡が入っていたような。」
「!そ、それはもしかして…。」
「あの後、何でもするから情報をくれと言われたよ。まあ何もしていないが、凄い執念だなあれは。」
「ぐっ…すみません。頑固なところは親譲りで…。」
「ああ、お前もだったな。」
「…言い返すお言葉がありません。」
「まあ会わないと言うならそれ相応の対応をしておく。ただ電話くらいはいいだろう?」
「…はい。」






*


翌日、ポアロに顔を出すとみのりさんが俺の元へと駆け寄った。

「おはようございます、みのりさん。」
「安室さん先週シフト出てないですよね?もしかしてお兄ちゃんに会ってたんですか?」
「あ、はは。まさかそんなわけないじゃないですか。」
「本当に?」
「ええ。それより今日店長は、」
「いません。私と安室さんの2人きりです。」
「…そうですか。」

それはまためんどくさいな。そう思いつつエプロンの紐を少しきつめに絞めてからキッチンへと入った。


「安室さん。」
「はい?」
「お兄ちゃんに電話したい。」
「それを僕に言われましても。」
「安室さんなら知ってるんでしょ?連絡先。というか今日は私たちの会話、お兄ちゃんは聞いていないんですか?」
「あの日はたまたまですよ。普段はあんなことしません。」
「…じゃあそのたまたまは次いつですか?」
「そうですね〜…みのりさんがいい子にしてれば来るんじゃないですか?後は僕に対しての態度を今一度改めてみれば変わるんじゃないですかね?」

そう言ってにっこり笑うと、みのりさんは俺の前からいなくなり箒を持って外に出て行った。吃驚してその姿を見ていると、外からチラチラと俺のことを見ながら掃除を徹底していた。

「ぶっ…まるで小動物だな。」

その健気な動物は、俺に何とか媚を売ろうと必死だった。その姿が少し可愛いと感じてしまったのは彼女の戦略に俺もまんまと引っかかっているということなんだろう。

とことん俺に媚びてみろ、風見妹。