懐いてるふり

「安室さんっ私が洗い物しますから!」
「安室さん!これ昨日作りすぎてしまったのでどうぞ!」
「安室さん、肩でも揉みましょうか?」
「安室さんっ安室さんっ!」


「みのりくん、すっかり安室くんに懐いちゃって微笑ましいねえ。」
「僕としては可愛い妹ができたみたいで嬉しいですけどね。」

何が妹だ。何のためにこんな至れ尽くせりしていると思ってるんだ。私のお兄ちゃんの為なのに、安室さんはニコニコと私の行動一つ一つを観察しているようだった。

正直、もう安室さんに文句言いたいしお兄ちゃんのこと聞きたいし、こんなに頑張ってるんだからそろそろお兄ちゃんと電話したい。絶対に連絡先を知ってるであろうあの携帯を奪い取ろうかとも考えるほどだ。

「みのりさん、この間作ってくれたミートパイ、とても美味しかったですよ。」
「…ああ、ありがとうございます。よかったです。」
「最近、悪態もつかないしとてもいい子になってきましたねえ。」
「え!?」
「これはお兄さんに報告しないと、かな?」

私は持っていたお盆をカウンターに置き、安室さんの元へ行く。私の気迫にビックリしていたのか安室さんは少し慄いていて、壁まで追いやったところで私は両手で行く手を阻んだ。これぞ壁ドンである。(お客さんいなくてよかった)

「言いましたよね?」
「…はい?」
「お兄さんに報告って、言いましたよね?」
「…あの、みのりさん?」
「いま、」
「今?」
「いますぐ!」
「…今は仕事中で、」
「店長!私と安室さん、休憩頂きます!!」
「ああ、構わないよ。行っておいで。」
「さ、安室さん!行きますよ!!」

私は自分の手より遥かに大きいその手を掴み、お店の外に安室さんを引っ張った。



「ここなら誰もいません。」
「…よくこんなところ知ってますね。」
「私のセーブポイントです。」

そう言って来たのはポアロから近い小さな庭園だ。天気も良くてピクニック日和であろうこういう日はみんな公園に行ってしまうからここは穴場だったりする。

「さあ、今すぐに!」
「…君は本当にお兄さんのことになると必死だね。」
「当たり前じゃないですか。そもそも本当は安室さんが何でお兄ちゃんと繋がってるのかとか聞きたいことは山ほどあるんです。でもどうせ教えてくれないだろうし、何も問い詰めないことだけでもいい子判定してほしいです。」
「あはは、ここ数日の君は可愛くていい子だったけど少し物足りなかったから今そういう事を聞けて嬉しいよ。」
「…安室さんってもしかしてマゾ?」
「ホー、調子に乗っちゃう悪い子にはお仕置きが必要かな?」
「すみません。」
「まあいいでしょう。ただ、電話に出るかは僕も分かりませんからね?」
「はい。…ついでに私にお兄ちゃんの電話番号を、」
「それは許可が出ていないので。」
「あ、はい。」

安室さんが携帯を取り出し、それを耳元に持って行った。するとすぐさま安室さんは言葉を発するようで、=お兄ちゃんとは連絡が付いたようだった。

どんだけお兄ちゃんレスポンス早いんだ。