5分間のお話

「ん…あ、れ、」

ここ、どこだろう。先ほどまで明るかったのに、なぜか暗い。というのもこれ、目隠しされてる…?


「目が覚めたか。」
「…あ、あの…?」
「正直その時隣にいたやつでよかったんだけどな、みーんな逃げちまうから悪いがお前にはこのモールの神になってもらう。」
「…どういう意味ですか?」


さっきからこの人の言ってる意味がよくわからないけど、多分私は危険な目にあっているということは確かだと思う。

「あの、逃げないので、目隠しだけでも外してもらえませんか?」
「……。」
「視界が暗いと、凄く不安になっちゃうんです。別にあなたの顔を覚えといて警察に言ってやるとかそういう気持ちはなくて、暗いのが怖いだけなんです。」


そう言うと犯人は目隠しを外してくれた。


「ありがとう。」
「…お前は変なやつだ。これから殺される相手に感謝なんか言いやがって。」
「…そっかあ。あと何分くらいあるんですか?」
「そうだな、おおよそ5分というところだ。」
「5分。…私、会いたい人が沢山います。あ、別に釈放のための説得じゃないですよ?ただ、どうせ後5分ならお話聞いてもらってもいいですか?」
「…勝手にしろ。」
「ありがとうございます。…私ね、中学生のころから兄と会えずにいたんです。生きているかも分からないくて、9年経った最近、生きていることが分かったんです!」
「……。」
「でもまだ会えてなかったから、兄に会いたかったな、って。思うんですけど…でも、それより強く頭に残る人がいて。家族とか友達とか、たっくさん死ぬ前には会いたい人がいるのに…その人が頭から離れなくて。」
「彼氏か?」
「…ううん。彼は、私と兄を再び巡り合わせてくれた大切な人。私の、大好きな人です。」


叶うなら、好きと言いたかった。また一緒に、無駄口も叩きたかったし、お家にも遊びに行きたかった。


「初恋でした。」
「……。」
「19歳で初恋って、遅すぎますよね。」
「……。」
「彼に思いを伝えることもできませんでした。…でもこれも、運命だったのかなって。」
「……。」
「あ、すみません。喋りすぎました。5分、過ぎていますよね。」
「…怖くないのか?」
「…怖いですよ。誰だって、きっと死ぬのは怖いです。貴方も、そうでしょう?」
「……。」
「だから、あなたは後悔しないように、生きてくださ「みのり!!!!!」

愛おしい人の声が聞こえた。

その瞬間、犯人の男は刃物を捨て両手を挙げた。


「お前の、変な話聞いて気が変わっちまった。」
「へ?」
「…怖い思いさせて悪かった。あれが、お前の初恋の相手か?」
「…はい。」
「お前の顔を見て直ぐに分かったよ。」
「貴様!!!!」
「逃げも隠れも殺しもしない。俺は、彼女に後悔無く生きろと言われてしまった。このモールが爆破されなかった時点で、俺の人生に後悔が無くなることはなくなったが、これから彼女へせめてもの償いとして生きるさ。…おまえも、彼女を大切にしろよ。」


そう言って犯人は警察に大人しく捕まった。

私はその瞬間、死の恐怖から解放されたからか、今更ながら全身が震えているのを感じた。そしてその後、安室さんに頬を叩かれた。

「バカ野郎!早く帰れと言ったのに、君は何をやっているんだ!」
「っ…すみ、ません、」
「あ、安室さん、何も叩かなくても、」
「コナンくんは黙っててくれ。」
「(こえ〜何だこの人。)」
「何でこんな数多くの人がいる中で君になるんだ…、全く俺がどれだけ君じゃなければと願って、」
「ごめん、なさいっ…」

人に、こんなに本気で怒られたのは小さい頃にお兄ちゃんに怒られた時振りだ。その時私は結局泣いてしまって、お兄ちゃんを困らせた。

だから泣かないように必死に唇を噛みしめていると、安室さんが息を吐き、私の背中に腕を回しギュッと抱き締めてきた。すごく、すごくドキドキしてるのにそれ以上に安室さんの温かさと安心さに先ほどより涙腺が弱っていた。

「ハア…ほんっと、もうこれ以上心配させないでください。」
「っあ、むろさ、」
「…君が死んだりしたら、俺は風見に合わす顔が無くなるだろう。」
「っ…ごめんなさい、」
「無事でよかった。まだ体が震えてる、痛いところはないか?」
「っぅ、は、い、」

その優しい声のトーンに、わたしは我慢していたものが溢れ出してしまった。

やっぱり最後に私のことを助けてくれるのは、安室さんなんだ。私は安室さんの背中に腕を回してギュッと力を込めた。