降谷さんはペロリとご飯を食べてくれた。キッチンの簡単な仕様とか教えてもらうのに2人でキッチンに並んでいると何だか新婚さんみたいでニヤニヤしてしまった。
「お風呂はここ。シャンプーとかこだわりある?」
「いえ、あ、でも自分の分は自分で、」
「いいよ。勝手に使ってくれ。ストックはここにある。」
「…ありがとうございます。」
「タオル類はこっちで、みのりの荷物はこっちのウォークインクローゼットに明日以降順次運ばれる予定だ。今夜の寝間着はあるかい?」
「あ、…パジャマ、もしかしたらないかも、です。」
「じゃあ後で俺のでよければ貸そう。」
「ありがとうございますっ」
「ここの部屋は俺が仕事で籠っていることが多い。申し訳ないが余程のことがない限りは入室を控えてくれ。掃除もここは無視してくれて構わない。」
「はいっ」
「寝室はこっち。…ダブルベッドだから2人で寝ても広さ的には問題ない。」
その言葉に私はドキっと胸が高鳴るのを感じた。恥ずかしいくらいに心拍が上がる。降谷さんは、その後も説明をしてくれたからきっと動じてない。
わかってる。私だけ多分こんな意識している。だって付き合ってる2人が一緒の部屋にいて、同じベッドで寝るって、そういうことをするに決まってる。
「みのり?」
「あっすみません、」
「慣れないことばかりで疲れたよな。」
「いえ、あ、あの降谷さん。」
「ん?」
「…お風呂、入ってきてもいいですか?」
「…ああ。ゆっくりどうぞ。」
私は下着を持ってバタバタと浴室に移動した。これからのことを考えると、頭が既に沸騰しそうだった。
「あ、ど、どうしよう…。」
大きくて綺麗なお風呂にゆっくり浸かって出たはいいものの、肝心のパジャマを降谷さんにお借りするのを忘れていた。
このまま出て行ったら痴女だ。間違いなく捕まる。(捕まえてくれるのは降谷さんだろうけど)もともと来ていた服は降谷さんが洗濯機に入れてと言ってくれたからそのままボーンと入れてしまった。
困った。共同生活初日にして最初の修羅場だ。
とりあえず下着だけつけて、バスタオルを体に巻いた。そしてそろーっとリビングにいる降谷さんに声を掛ける。
「降谷さん…。」
「あ、でたの…か、ってな、何して、」
「すみませんっ!!パジャマお借りするって言ったのに、借りるの忘れちゃって、着てた服も早々と洗濯機に入れてしまって、何もなくて、こんなお見苦しい恰好で本当にごめんなさいっ!」
いつも以上に大きな声を出して頭を下げると、向かいからくすくすと笑う声が聞こえた。私は涙目ながらに顔を上げると降谷さんが随分と楽しそうな様子で私にパジャマを渡してくれた。
「あーびっくりした。」
「すみませ、」
「俺誘われてんのかと思ったよ。」
「ちがっそんなんじゃ!」
「ははっわかってるわかってる。いいから早く着てきなさい。」
「はいっすみません、お借りしますっ」
私は急いで脱衣所に戻ろうとしたその時。後ろから降谷さんに腕を引かれた。そしてそのまま降谷さんに抱き締められ、もうキャパオーバー寸前だった。
「あんまり煽らないで。」
「っそんな、つもりじゃなくて、」
「本当はこのままタオル剥がして、してしまいたい気持ちでいっぱいなんだ。…今までみたいに待ってあげられない。」
「ひゃっ、」
降谷さんは首元を吸い付き、指でつーっと背中を伝う。それがくすぐったくて何か変な気持ちになってしまう。
お兄ちゃん、多分私今日、お兄ちゃんの上司に食べられます。