私たちには時間がある

「あっはは、もう勘弁してくれ、」

なぜこんなに降谷さんが笑っているのか。何が起こったのか、ご説明しましょう。

がちがちに緊張した私は寝室に入る手前、盛大に足を絡ませ扉に強打した。暫く痛くて立ち上がれなくて最初は心配した面持ちでいてくれた降谷さんに大丈夫ですと顔を上げたところ額にたんこぶができてしまったらしく今に至る。

全くもってどんくさいにもほどがある。

「ほら、氷のうで冷やしておきな。」
「ありがとうございます…。」
「それにしたって、くくっすっごい音したよな。」
「…下の人に迷惑かかってないといいです。」
「そうだな〜今夜は激しいと思われたかも?」
「っあ、えと、し、下ネタですか今のは。」
「…くくっ、そうだよ。おじさんっぽかったか?」
「…童顔おじさん。」
「みのりに童顔って言われるのは心外だな。」
「私は年相応です。」

はいはいとはぐらかされたけど、先ほどまでの緊張の糸がようやく解けた気がした。降谷さんの自然な感情が見られることがすごく嬉しかったりする。

「ふぁ…。」
「子供は寝る時間か?」
「ち、違うし。子ども扱いやめてください。」
「じゃあさっきビビッて転んだのはどこの誰ですか〜。」
「……ぐ、」
「無理しないでいいよ。」
「へ?」
「俺はお前より大人だし待てと言われれば待てる。まあ本音を言えば今すぐにでもでろっでろに甘やかして抱いてやりたいけど、慣れるまでこのままでいよう。」
「……いい、んですか?」
「ああ、俺たちには時間ある。」

降谷さんは私の頭を撫でるととても柔らかい笑顔で私を見つめた。

私はその表情が堪らなく好きで好きでたまらなかった。そのまま降谷さんの元に歩み寄り、ぎゅっと抱き着いた。

「すき、です。」
「…俺も好きだよ。」
「すっごいすっごい、すき。ありがとう、降谷さん。」
「…(勘弁してくれ。)」

その日はずっと降谷さんにくっついて眠りについた。もちろん、降谷さんが困っていたことなんて私には知らない。