「本日会計課より移動となりました、辻川みのりと申します。至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願い致します!」
本当に私は公安外事第一課に移動となった。直属の上司にも移動先は伝えることはできず、私が居なくなることに対して抗議もしてくれたらしい。それほど会計課でも必要な存在になれたことは嬉しかった。私が公安に入ることは誰も知らないんだ。
「よろしく。今日いるメンバーの他にも後数人メンバーはいるが、全員が揃うことはほぼない。君が降谷さんの推薦のもとこちらに配属になったことも聞いているが、降谷さんはここにほぼ来ないから俺が代理で君の指導をする風見だ。よろしく。」
「風見さん、よろしくお願いします!」
「…何だか君は子供のようだな。」
「え?」
「そんなにキラキラした目をもつ人間はこの公安にはいない。」
「……。」
「なぜ降谷さんが君をうちに推薦したのかは分からないが、今までいたように生ぬるい環境とは大きく違うことだけは最初に言っておく。」
「はいっ。」
「後、もしこの警察局内で変な身に合ったら直ちに報告するように。」
風見さんは一見堅くて冷たいような人に見えるかもしれないけど、本当は優しい人な気がした。そしてきっと前に降谷さんが言ってた部下ってきっと風見さんだ。
私ははい、と笑顔で返事をすると風見さんは苦い顔をして業務のフローから指導が入った。私がやりたかった仕事が、きっとここにあるんだ。
「辻川ちゃん、ご飯行こうよ。」
「いや俺と行こうよ、美味しいランチ御馳走するよ?」
「こんなおっさん嫌ですよね、俺が多分1番年近いし俺と…。」
「あ、え、っと…。」
午前中の業務が終わり、お昼どうしようかと思ったら4,5名の先輩方からお声が掛かった。嬉しいけど、どうしたらいいのか分からない。私はもう卒業すると決めたおどおど感が思わず出てきてしまう。
「あ、辻川。降谷さんが昼はここへ来いと連絡があった。」
「え、」
「何だよ降谷〜あいつ〜。」
「降谷さんじゃ勝てないっすわ…。」
「おいお前俺たちなら勝てると思ったのか!」
「いやいや、そういうんじゃなくて!」
「あ、じゃあすみませんっ皆さんありがとうございます!今度皆さん全員と一緒に、お昼ご飯食べれたら嬉しいです。それでは失礼します。」
「「…(天使)」」
私は風見さんから貰ったメモを見ると直ぐに待ち合わせの場所が分かった。私が毎朝通る、ポアロだ。きっと外だから安室さんでいいんだよね…少し緊張した面持ちでポアロに向かった。
「いらっしゃいませ!お1人様ですか?」
「あ、えと、はい。」
「ではこちらへどうぞ!」
中に入ると可愛い女の人が席へと案内してくれた。降谷さん、いないのかな…。
「何にします?」
「えっと…ランチセットでお願いできますか?」
「了解致しました!」
「梓さーん、お昼休憩…あ、いらっしゃいませ。」
「あっお、じゃましてますっ…。」
「あれ?安室さんもしかしてお知り合い?」
「ええ、まあ。」
「じゃあ休憩入っていいですよ!今お客さんもいないですし、お二人でお話でも!」
「それじゃあご遠慮なく。滝川さん、テーブル席に移動しておいて。」
「あ、はいっ。」
滝川、とは私が今日もらいたての偽名だ。やっぱり降谷さんはなんでも知ってるんだなあと思いながら、頂いたお水と一緒に席を移動した。やっぱりポアロにいる安室さん…降谷さんはあの頃恋をしてた時の気持ちを少し思い出してドキドキしてしまう。
「お待たせ。」
「あ、はいっ。」
「どうだ?初日は。」
あ、降谷さんのトーンだ。変な感じ、着ているのはエプロンに軽装なのに、目の前にいるのは安室さんではなく降谷さんなんだから。
「皆さん優しくて、楽しいです。」
「優しくて楽しい、か。公安のやつらが聞いたら笑いもんだな。」
「あ、あと風見さんもとても親切に色々教えてくださってます。」
「そうか。」
「午後も仕事が楽しみです。こんなこと思ったの、入社したての頃振りで、降…安室さんには本当に感謝してます。」
「いいよ2人だから。」
「あ、はいっ。」
「もし嫌なこととかされたら風見に言えよ。うちではないだろうけど、他部署のやつに何かされたら直ぐに消してやるから。」
「…降谷さんが言うと冗談に聞こえないです。」
「冗談に聞こえたか?」
ニヤッと笑った降谷さんはやっぱり少し怖い。きっと本気で消されちゃうんだろうなと思い私はごくりと水を飲んだ。
「はい、お待たせしました〜!」
「わあ、おいしそう。ありがとうございますっ。」
「安室さんのお知り合いだしいろいろサービスしちゃいました!」
「え、すみません…お代は上乗せするので仰ってください。」
「それじゃサービスの意味ないじゃないですかあ!」
「ありがとう、梓さん。でも滝川さん、この量食べられますか?」
「食べられますよ。私こう見えて大食いなんです!」
「え〜そんな細いのに?モデルさんですか?」
「違いますっ!もっと、食べて大きくなりたいです。」
「子供ですかあなたは。」
そう言って降谷さんは私の頭を撫でた。その姿を見て、梓さん、と呼ばれた店員さんがええええと叫んだ。私はびっくりしてスプーンを落としてしまった。
「お、お二人は付き合ってるんですか!?」
「な、な、そんなわけないじゃないですかあ!」
「で、でも今頭撫でて…!」
「い、犬です!犬だったら頭撫でるの、普通ですよね?!」
「…滝川さんは、いつ僕の犬になったんですかねえ?」
「あっいやそういうわけでは、」
「ヒッあ、アダルト…!アダルトです!キャー!」
そう言って梓さんは裏に戻って行ってしまった。どうしよう、私は凄い勘違いをさせてしまったのかもしれない。
「す、すみません…。」
「くくっお前は犬か〜。」
「ちがっそれはなんていうか、」
「犬なら子犬だな。」
「ち、ちがいます!」
「はいはい。いいから食べろよ。時間後10分だぞ。」
「え、嘘!遅刻したら降谷さんの、せいでふほ、!」
「ふっ、飼い犬ができて俺は嬉しいよ。」
犬じゃないのに!とまた反論したかったけど、あまりにも降谷さんの表情が優しくて、私は食べることに集中しないと顔が赤くなってしまうと感じた。