気持ち悪い違和感

「言ってた写真、持ってきてくれたかな?」
「はいっこれです。」

家に入るなり安室さんはコーヒーを淹れてくれ、ダイニングテーブルに座る様仰いだ。家の中も規格外の広さで、もうあまり見ないようにしていた。

そんな中私は事前に言われていたお兄ちゃんの写真を安室さんに渡した。なるべく最近のものに近いやつと言われたので、お兄ちゃんが大学の入学の時に撮った写真だ。

「ホー…これはまた真面目そうな方ですね。」
「真面目な人です。かっこいいですよね。」
「みのりさんはこういう人が好きなんですか?」
「こういう人というよりは兄が好きなんです。」
「…もしかして禁断愛、とか?」
「…安室さん、実はアホですか?」

私は冷めた目で安室さんを見ると、違いました?と言いながら嘘くさい笑みを浮かべていた。

「お兄ちゃんのことを、本当に尊敬してるんです。小さい頃から私のことを守ってくれて、言わば私のヒーローなんです。」
「レッド的な?」
「そう。レッド。私の人生の主人公はお兄ちゃんだったんです。」
「…君がお兄さんに対する思いは分かったよ。それで、いついなくなったんだい?」
「…大学を卒業してから。就職先も言われず、お兄ちゃんは私たち家族の前から消えました。今まで家族を心配させるようなこと、無かったので…。」
「ではその就職先がきっと親御さんやみのりさんにも言えないような場所だったのでは?」
「…ヤクザとか?」

そう言えば安室さんは私から顔を背け、肩を震わせていた。何が可笑しいんだ、笑うなら笑うで思いっきり笑ってほしい。

でも人に言えないような仕事ってヤクザ以外思いつかない。

「そんなクソ真面目なお兄さんがヤクザなんてありえないでしょう。」
「分かってますよ!でもそれしか思いつかなくて、」
「お兄さんはどんな学校に通っていたんですか?」
「…警察学校です。」
「警察は黙秘権が多い。お兄さんはその影響があるんじゃないですかねえ。」
「…でも警察になったならそれはそれで私たちに隠すようなことじゃないですよね?ドラマとかでもそんな家族に隠れて姿を眩ます様なもの見たことないです。」
「そうですねえ…。」
「安室さん、お兄ちゃんを、見つけられないですか?」

私は縋る様な思いで安室さんを見つめる。安室さんは少し困ったような顔をしてまた顎に手をあて考える仕草を見せた。

何だろう、この人。なんか、違和感。






私は昔から人の気持ちや動向に敏感なところがあった。ちょとした表情の違いや仕草の変化、一瞬でも目の色が変わると敏感にその感情を推測してしまう癖があった。

だからこそ、私の名前を聞いたあの人いい、安室さんの違和感を感じる感情に私は気持ち悪さを覚えた。

「安室さん、もう一度聞きます。」
「はい?」
「兄を、知りませんか?」


この人は知っている。

安室さんの指先が微かに動いたことを、私は見逃さなかった。