「風見、お前の妹は何者だ?」
「…はい?」
久しぶりに警視庁に出勤するなり、皆ここぞと捜査資料の捺印やら俺が単独行動をしていた分だけ綺麗に白紙になった資料やらが積み重なっていた。
それを見て気の毒に思った風見が俺の作業を指示出ししながら手伝ってくれている中、最近出会った目の前にいる部下の妹について話を振った。
「あの洞察力と観察眼、お前よりいいものもってるんじゃないか?」
「…みのりに会ったんですか?」
「お前を必死に探していたよ。健気な妹を持ったものだな。」
「…あいつは、まだ俺のことを…。」
風見は苦い顔をしていた。こうしてみると、確かに2人は少し似ている気がした。黒髪や白い肌、少しきりっとした顔立ちは年齢の割に大人びている。最初は驚いた。まさかこういった形で部下の妹と出会うこととなるとは。公安に入るということは仲のいい友人はもちろん、家族や恋人にもそのことは話してはいけない。でも会ってはいけないということではないはずだ。
「お前、家族には会っていないのか。」
「はい。特にみのりは、…降谷さんは接触があったならお分かりかと思いますが鋭い観察眼を持っています。だからきっと俺が怪我をして家に帰ったり、家に帰ることが増えたりすればきっと探索してくる。そして俺の小さな反応に気が付き、いずれ公安であることがばれてしまうことを恐れ家族の前から姿を消しました。」
「…ご両親にも?」
「いえ、さすがにそちらは。」
「ホー、妹は生きているかも分からないと切羽詰っていたようだが。」
「…両親には、妹には言わないよう口止めしているので。」
「なるほど。」
「何か、妹から言われましたか?」
俺はその言葉にフと笑みが浮かんだ。
「安室透として風見裕也の捜索を依頼された。」
「…あのバカ、」
「そして多分俺の微かな指の震えで、お前のことを知っているということがバレただろう。」
「!?な、なぜそのようなことを、」
「風見、悪いが彼女、使わせてもらうぞ。」
「…協力者、ですか。」
「と言ったら?」
「…私は何も言えません。それに協力者は他の捜査員にも告げないはずです。それを伝えた以上、あなたはみのりのことを協力者にはしないでしょう?」
良くできた部下だ。少しは嫌がられると思ったのに、顔色一つ変えやしない。
「まあそうだな。」
「…降谷さん、申し訳ございません。。みのりのことは適当にあしらってもらえればと思いますので。」
「あれは諦めない顔をしていたぞ。」
「…しかし、」
「まあお前がその気になったら言ってくれ。それまではしらを切ってやる。」
「…かしこまりました。」
「風見、後悔するなよ。」
俺は案外部下のことも、あの兄に必死な妹のことも嫌いじゃないんだろうなと思った。