降谷さんが潜伏し始めて早1週間。お姿は全然見ていない。それにプラス風見さんの姿もここ数日確認できていない。
きっと私には想像できないほどの現場にいるんだろうな。何と連絡しても恐らく私は邪魔をしてしまうだけ。そう思って連絡をすることすら躊躇ってしまった。
「(職場の人間としては、できない。けど…恋人としては、心配の連絡くらい入れても、いいのかな。)」
会いたい。ううん、会わなくてもいい。声が聞きたい。私はその思いで、震えながらも降谷さんに電話を掛けた。
恐らく出ないであろうと思っていた。でもそれは私の予想を裏切った。
「っも、もしもし!?」
『…何か急用か?辻川から連絡を入れてくるのは珍しいな。』
ああ、きっと仕事だと思ってる。でもね、違うんだよ。降谷さん、私は…あなたの彼女として、心配で連絡をしたんです。そんなこと言えず、私はせっかく電話が繋がったのに言葉が出ずにいた。
『辻川?』
「…っあ、」
『要件がないなら切るぞ。悪いが今立て込んでて、』
「零っさ、ん……。」
『……。』
「零、さん…心配でっごめんなさい、ご迷惑だってわかってたんですけど、どうしても、声が聞きたくて、」
ああ、こんなこと言って降谷さんは困るに決まってるのに私は本当に空気が読めない。公安に入って強くなった気でいたけど、結局私は弱いままだ。
電話越しに降谷さんがため息を吐いたのが分かった。やはり呆れられてしまったに違いない。短いお付き合いだったな。憧れの降谷さんと少しでもお付き合いできたことが夢のようだった。私はまた涙が零れそうになるのを我慢した。
『この電話は公安としてのものではないな?』
「…申し訳ございません。」
『…みのり。』
名前を言われてドキっとした。その声はさっきより優しく聞こえた。
『連絡できないでごめんな。』
「っ私の方こそ、我慢できなくて、ごめんなさいっ」
『謝ることではない。…電話くれて嬉しいよ。』
「ぅ〜、生きててよかった、ですっ、」
『お前を置いて死ぬわけないだろ。』
「はいぃ 」
『ははっそんな情けない声出すな。…後2日だ、終わったらお前の家に行ってもいいか?』
「っ絶対、来てくれますか?」
『ああ、行くさ。』
「へたっぴだけど、ご飯作って、待ってます。」
『ホー、それは興味深い。』
「だから、御無事で。」
『…ああ。』
名残惜しくも私は電話を切った。降谷さんがどうか、何事もなく執務を終えられますように。