「降谷さん、こちら全員確保しました。」
「ああ、ご苦労。これで全てだな。」
「はい。後は警視庁に戻って報告を、」
「風見。それ任せられるか?」
「ハッ、しかし降谷さんの単独部分はいかがいたしますか?」
「それは後で俺が付け加えておく。」
「かしこまりました。今日はもうこのままお帰りで?」
「ああ。」
「ゆっくりお休みください。」
「…お前もな。」
一つ、大きな執務を終えた。あの日から何日時が経ったのかは分からない。麻薬組織のバラしはそれほどまでに時間が掛かる。飯を食ってる暇も風呂に入ってる暇もない。
冷静に自分の姿を見るとボロボロのスーツにこけた頬。酷い顔をしている。それもそうだ、何度死に際を見たか。今回も1人の仲間を失った。それも俺を庇っての死だった。
あいつは「降谷さんを守れて死ねるなんて、本望です。」と最後に言って笑った。みんなそうやって俺の前から一人、一人といなくなっていく。俺はあいつらの正義を負うほどの人間になれるんだろうか。
愛車に乗りキーを刺したとき、携帯が鳴った。
【約束の日です。ご無事ですか?】
彼女からの連絡だった。俺は先ほどからの重かった気分から少しだけ優しい風が吹く。
【ああ、無事だ。あと1時間後にそちらへ行く。】
【よかったです。お帰りお待ちしてます。】
待ってるやつがいる、それだけで生きる価値はより強くなった。俺は急いで自宅へ一度寄りシャワーを浴びてまた家を出た。
高橋の自宅前につき、インターフォンを押すと中からパタパタと音がし勢いよく扉が開いた。そしてその先にいたのは、真っ白で綺麗な彼女だった。
「おかえりなさいっ、」
「…ただいま。」
「あ、おかえりなさいって変ですよね、あえっと、おつか…っ降谷、さん?」
おかえりなさい、何てそんなのずるいだろ。俺は扉を閉めすぐに辻川を抱き締めた。小さくて細くて、本当にこいつは公安警察なのか?と思わざるを得ない。でもそれを本人に言うと傷付くことを知っているから俺は思っても言わない。そんな彼女は俺が守ればいい。
「降谷さん、くるし、」
「…ああ、ごめん。」
「いえ、…本当に御無事でよかった。」
「…待っててくれてありがとう。」
「っ…あ、ご飯、たくさん作ったんです!こちらへどうぞっ!」
辻川は俺の腕を引っ張って前を向いた。少し涙ぐんでるところを俺は見逃さない。きっと不安で一人で抱え込んでいたのかもしれない、今日はゆっくり甘やかそうと思った。
「…うまい。」
「あー…よかったです。」
「全部作ったのか?」
「はいっ、降谷さんの好きな食べ物、聞いておけばよかったんですが…。」
「辻川が作るものなら何でも好きだよ。」
「っそ、れならよかったです…、」
顔を赤くして目を反らす。そんな姿も愛おしくてたまらない。ここ数日の現場が嘘のように安らいだ。
「デザートもあるんですっまだ食べられ、」
「みのり。」
突然名前を呼べば辻川はビクっと体を震わせた。
「食べたい。」
「えっあ、デザート、」
「お前のこと。」
「…へ?」
「デザートはまた後で。」
「あ、えっと、」
「抱きたい。…いいか?」
「っ…はいっ、」
それを合図に俺は彼女をベッドへと連れ込んだ。