久しぶりに降谷さんから甘いキスをされ、私は目の前にいる彼への安心感から少し涙が出そうになった。それに早々に気づいたのか、降谷さんは不安そうな顔をした。
「どうした?」
「っいえ、なんでも、」
「何でもないのにこんな泣きそうな顔しないだろ。」
「……、」
「みのり?」
私の名前を呼ぶときの声が好き。不安げに見せる困った眉が好き。さらさらで眩しい金色の髪が好き。褐色のたくましい体が好き。降谷さんの、全てが好き。
「すきっ…、」
「っ…な、」
「降谷さんが、すきで、こうやって戻ってきてくれて、ご飯を食べてくれて、キスをしてくれて、私はすごく、すごく幸せです、」
そう言って微笑むと、降谷さんは顔を歪めて私の体を引き起こしギュッと抱き締めてきた。どこか震えているように感じる肩を私はそっと包み込んで降谷さんの背中を擦った。この背中を、私たち部下は何人も見て憧れ、乞い、救われてきた。
だからあなたは先頭を走っていても一人じゃないんだよ。そう小さく呟けば、降谷さんは小さく私の先輩であり、降谷さんの部下である人の名前を呼んだ。私の肩が濡れるのを感じ、私は降谷さんの背中から頭を優しく撫でた。
少し経つと、彼は安心した様で抱き締めたまま眠ってしまった。私はそのまま彼ごと横になった。最初は抜け出そうと思ったけど思った以上に強い力で抱擁されてしまったためそこから抜けそうになかった。起こすのも申し訳ないし、このまま眠りにつくことにした。
翌朝。
「どうしよう…。」
私はもうすぐ家を出ないと出勤時間に間に合わなくなってしまう。だけどこんなにもぐっすりと寝ている降谷さんを起こすのが申し訳ない…。私は近くにあったスマホに手を伸ばし、風見さんに連絡を入れる。
【おはようございます。風見さん、今日降谷さんはお休みでよろしかったでしょうか?】
【おはよう。いや、我々は休んでくれと言ったんだが、今日から出勤すると言っていたよ。】
【あの、昨日何もなかったんですが、今降谷さんうちで眠っていて、私も動けない状態でありまして、ただ後10分で動かないと出社に遅れてしまうのですが、起こして行った方がいいのでしょうか?それともこのままお休みになられていた方がいいですか?】
【辻川もそのまま降谷さんの傍にいてやれ。それがきっとあの人の1番の癒しだ。】
【承知しました。申し訳ございません、よろしくお願い致します。】
【ああ、こちらこそ頼む。降谷さんを休ませてくれ。】
私はひとまず息をつき、携帯を手放す。ふと降谷さんの顔を見ると、やはり端正な顔立ち。眠っていても美しさがわかる。
昨日は気が付かなかったけど、こうやって近づいてみると小さな傷が沢山出来ていた。首元や、腕。刃物か何かかな、スーッとその痕を撫でるとん、と降谷さんが少しくすぐったそうにした。
私は慌てて手を離し、じっと動かず丸まった。目の前にはシャツ越しでもわかる鍛え上げられた体。この人はどこまでもかっこいい。
少しだけギュッと抱き締めると、その力は何倍にもなって返ってきた。
「ふ、ふる、やさん…?」
「…はよ。」
「おはようございますっ」
「あー…ごめん。昨日結局あのまま寝ちゃったんだな、俺。」
「お疲れだったんだから当たり前ですよ。」
「今何時だ?」
「えと、先ほど8:40でした。」
「…ここから警視庁まで何分かかる?」
「…30分ほど。」
「遅刻か。」
「あ、でも風見さんには報告致しましたっそれに風見さんは降谷さんはお休みしてほしいと、」
「あいつだって3日はほぼ寝ず捜索してたんだ、俺だけ寝てるわけにはいかないだろう。」
そう言って降谷さんはもう動こうとしていた。1週間以上捜査にあたっていた人が何を言っているんだ。私は動こうとした降谷さんを押し倒し、馬乗りになった。すると降谷さんはキョトンとした表情で私を見た。
「これは、私が風見さんから受けた指令です!あなたを休ませるのが、今の私の仕事なんですっ。」
「……。」
降谷さんは一転、ブッと吹き出し肩を震わせて笑っていた。こんな姿見るの、初めてだ。
「あーはいはい、じゃあその指令とやらに従いますよ。」
「もう!笑いごとじゃないんですよ!」
「いやー、良い眺めだな。」
「は、」
「この体位でどうだ?昨日できなかったし。」
「っバカ、あ、ちょ、っとゃだうそ朝ですよっ、」
「誰が朝はセックスしてはいけないって決めたんだ?」
「ぁっで、も、これじゃ休みにならっんん、」
もうマウントは完全に降谷さんが持っている。私はその腕に引かれてされるがままになってしまうんだ。