猪突猛進であれ

あれから1週間、安室さんはポアロのシフトに入っていなかった。今日こそはいるかな、と思い出勤をすると既に掃除を始めている彼の姿があった。

「おはようございますっ。」
「ああ、みのりさんおはようございます。何だかお久しぶりですね。」
「そうですね、本業がお忙しかったんですか?」
「…ああ、まあそこそこですね。」
「安室さん、私がお願いした件は進んでいますか?」

躊躇という言葉は私の辞書にない。知りたいことは直ぐに知りたい。やりたいことはやりたい。猪突猛進、そんな四字熟語が今の私にぴったりだ。

「その件ですが、少しだけ情報がありました。」
「ほ、本当ですか!?」
「ですが今は仕事中なので、また後でいいですか?」
「はいっもちろん!安室さん、今日仕事後お家に行っても…。」
「…それは構いませんが、今日僕はクローズまでなので21時以降となりますが?」
「大丈夫です、待ちます。」
「…君には夜遅い時間に独身男性の家に行くと言う恐怖心はないんですか?」

私はその言葉につい動きを止めてしまう。そっか、そういったことを何も考えていなかった。そもそもそういう男女の営み?的なものはこれまで縁がなかった。でも別にそれに恥じてることはない。だってそもそもお兄ちゃん以上に素敵な人が現れないんだもん。

「みのりさん?」
「…安室さんがもし、私に手を出すようなことをしたら下手したら犯罪です。私、まだ未成年なので。」
「…はは、確かに。」
「もし前に言っていたお兄ちゃんが警察だったら、という仮説が本当ならそれを利用するとなれば別ですけど。」
「全く、怖いことを考える子だ。」
「それに安室さん、全く私に興味ないでしょ?」

これだけモテる人だ、相手なんてごまんといるはず。きっと生活に支障が出る身近な人間には手を出さないということは明白だった。

それくらい動作を見なくてもわかる。

「心外ですねえ、僕年下の女の子って可愛くて好きですよ?」
「今のいつも来てるJKに言ってあげたらどうですか?」
「あはは、それは大変だ。」
「安室さん、やっぱり中々性格悪いですよね。」
「君はもう少し君のいう真面目で紳士なお兄さんを見習ったらどうです?」

その後もオープンまで私と安室さんの言い合いは続いた。