平和な日々から一転、俺にとっての日常が戻ってきた。
『降谷さん、こちら準備整いました。』
「ああ、じゃあ合図で潜入だ。」
『了解。』
日本も平和と言われているが、表に出ていないところではまだテロや犯罪などが多発している地域がある。黒の組織に潜伏しながらも、ほっとけないほどに炎上してしまったテロ組織には俺たちで対処せざるを得なかった。
毎回犠牲が出ないとは言い切れない。いつ自分が死んでもおかしくない。
みのりには「俺たちには時間がある」と言ったことがあったが、そんなこと本当はない。いつだって死と隣り合わせだった。
*
「お疲れ様です。」
「ああ。」
「降谷さん、直帰致しますか?」
「いや。報告書が残っているから戻るよ。」
「では私もそうします。」
「風見、お前は家に帰れ。」
「いやでも、」
「どうせ寝てないんだろう。今日の動きを見てればわかる。」
「…申し訳ございません。」
「万全な体制でないと死のリスクも高まるんだ、自己管理はしっかりしていろよ。」
「はい。では私はこちらで失礼します。」
「…風見。」
「はい。」
「…あー、お前明後日非番だったな。」
「…はい?」
「夕方だけでもいい、時間作れるか?」
「構いませんが、何か捜査ですか?」
「また連絡する。」
「は、はい。」
「じゃあお疲れ。」
「お疲れ様でした。」
風見の後姿を見送りつつ、俺は車を走らせた。休みの日なのに上司に会うことになるとは可哀そうだと自分でも思うが、あの休みの日、ふと辻川が零した「お兄ちゃんと会いたい」という言葉を思い出した。いつかなんていつでも来ると思ってはいけない状況に、その願いは早めに叶えておくに越したことがないと思い、俺はまたこの兄妹にひと肌脱ぐこととする。