あだ名で呼びたい(安室)

「あむぴ。」
「…はい?」
「って可愛くありません?」
「…それを僕に聞かれましても。」
「え〜アムロって何か某ガンダムみたいじゃないですか。あ、知ってます?」
「ええ、まあ。」
「だから安室さんって呼ぶとそればかり思い出しちゃって。」
「…でも安室さんと言ったら歌手の方じゃないですか?」
「あ〜確かに。じゃあやっぱり安室さんはあむぴですね!」
「…よく分かりませんがお好きにしてください。」


安室透さん。今日からあむぴ。彼は私の家の向かいで働く喫茶店ポアロの店員さんだ。褐色の肌、キラキラの色素の薄い髪、真ん丸たれ目の瞳、高身長。こんなイケメンを間近で拝める日が来るだなんて誰が思ったことか。何だか事件の多い街だけど、住んでてよかった。

安室さ…あむぴがここに来てから、私はもっぱらポアロの常連客となった。女子大学生のバイト代の半額以上はポアロのハムサンドとコーヒー代となって消えてるほどに通い詰めてる私はもうあむぴに認知もされてるしファン度でいったらかなりなものだ。通い詰めたからこそ、お客さんがひく時間も、それのおかげであむぴを独り占めできる時間も全て把握していた。今日も周りにお客さんはいない、計画通りだ。

「あむぴ〜!」
「何だか気が抜けますね。」
「え?そう?」
「一文字変えるだけでこんなにも印象が変わるとは驚きです。」
「えへへ。あむぴを驚かせることに成功ってことですね!」
「ええ。みのりさんにはいつも驚かされますよ。」
「え〜?でもどうしよう、あむぴって呼び方が出回ってしまったら私嫉妬しちゃう。」
「そういうものですか?寧ろ自分から発症していくことっていいことじゃないですか。」
「嫌ですよぉ!だって私だけのあむぴだもん!」
「…私だけの、ねえ。」
「あ、いやそう変な意味じゃなくて!呼び方的な意味でなんですけど、」
「ふふ、みのりさんは面白い人だ。」
「…面白いより可愛いって言われたいです。」
「可愛いですよ、とても。」

安室さ…あむぴは優しい。その微笑みが本当のものかなんて分からないけど、私は今目の前にいるあむぴが大好きだ。優しくて、かっこよくて、スマートで…まるで王子様のよう。そう本人にも伝えたことがあるけど、そんなものではないですと否定されてしまった。だけど私にとっては理想の王子様だった。

「あむぴはいつでもかっこいいですね。」
「…やっぱりあむぴってやめません?」
「え〜!何でですか!」
「…何かかっこ悪いと言うか、拍子抜けというか…。」
「え、あむぴはあむぴだもん!かっこいいです!」
「…では梓さんに聞いてみましょう。」
「でた私の天敵。」
「まあそう言わず。梓さーん、」
「は、はい?(睨まれてる、睨まれてる…!)」
「今みのりさんにあだ名を付けられているんですが、それについて聞きたくて。」
「えええ…私ですか…。」
「知っても榎本さんはそう呼んだらダメですからね!」
「も、もちろんです!!」

榎本梓。あむぴと同じくポアロの店員で、あむぴとも仲がいい。悔しいけどめちゃくちゃ美人だし、いつも敵対視していた。そもそも同じ土俵にいないとは思うけど…。

「それで、あだ名って…?」
「あむぴです!」
「…あむぴ?」

榎本さんはキョトンと首をかしげると数秒後あむぴを見て口元を抑えるようにして震えていた。そんなに笑うことないのに。

「ほら、だから言ったでしょう?」
「すみませっふふ、あまりに安室さんにしては可愛らしいあだ名で、あむぴっ…ふふ、」
「梓さん、笑いすぎです。」
「なんで!?いいですよあむぴ!絶対可愛いもん!」
「…29歳に可愛らしさを求めてはいけませんよ。」
「年齢なんて関係ないです!」
「しかしあまりに威厳が…。」
「…ダメ、ですか?」

榎本さんはまだ笑ってるし、私はしょぼんとあからさまに落ち込む。結構気に入ってたんだけどなあ…あむぴ…。そう思っているとため息をつきながらもあむぴが頭を撫でてくれた。

「仕方ない。…その呼び方は2人きりの時だけ、ですよ。」
「っはい!!」

やっぱり最高にあむぴはかっこよくて王子さま!