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御年28歳。独身OL。2年後にはついに大橋を渡ってしまう現実に目が痛かった。周りの同僚は寿退社やら子育て休暇やら、ついには後輩までそのような報告を受けるばかり。会社の上司には「辻川くんはまだまだ大丈夫だよな。」そうセクハラとも言い難い台詞を言われつつも苦笑いで受け流す。
「辻川さんって美人なのにどうして結婚しないんですか〜?」
「…梅田さん、勤務中だよ。」
「そういうところじゃないですかぁ?生真面目っていうか、もっとラフにいきましょうよ〜。」
「…梅田さんはラフすぎるよ。」
「え〜。」
しまいには後輩にもこの言われよう。非常に情けないにもほどがある。私は息を吐きパソコンの文字と睨めっこした。
別に、結婚したくないわけじゃない。それ以前に彼氏もいない。正確にいうと、そう言う話の流れになると怖くなって逃げ出し、本気で付き合ってないんだろと言われ別れてしまうのがここ最近の私の恋愛事情。年も年だし、今言い寄ってくる人は将来を考えた上でお付き合いをしてくれる人が多い。
でもどこか、違うと感じてしまうのはきっと数年前の元彼のせいだ。
あの頃、私には彼しか見えてなくてそれこそ結婚を考えていた。それはきっと彼も同じだったと思う。だけど少し特殊な仕事をしていた彼を理解することができなくて別れたくないと何度も縋った。今思えばその時発した彼の言葉が嘘だったんじゃないかと冷静に考えることができる。
でも当時20代前半だったし、そんなこと言われてそりゃもう初めて男遊びというものをして必死に彼を忘れようとしたっけ。毎晩遊び呆けて、化粧も服装も全部変えて今となれば黒歴史。あの頃使っていた携帯はバックアップを取らずに解約してしまった。
今でも彼が好き、という淡い思いはない。だけど、会えるものなら会って話してみたい。でないと私自身結婚に踏み込んだお付き合いができずに一生独身じゃないかと思った。
「まあ、それでもいっか。」
「え?なんですかぁ?」
「あ、ううん。…一生独身でもいいかなって考えてただけ。」
「え〜!信じられない!辻川さん、今日合コン行こう!」
「ハァ?ていうか(ため口…。)…まあいいか。」
「いいって言いましたね?」
「あ、いやそっちじゃなくて、」
「ちょうど今日1人あっちが追加できないかって連絡きたんですよぉ。OKしておくんで、辻川さん、強制参加決定。」
「……ハア。」
「大丈夫、相手30代もいるみたいですよぉ?」
「…まあ、若い子の煽て役にでもしてね。」
「辻川さん若ぶっても大丈夫大丈夫。」
梅田さんはニコニコと笑って私の肩を叩いた。こんな後輩でも可愛いと思ってしまうんだもん、本当に年を取ったなあと感じてしまう。
そして今日の自分をよく見ると合コンとかそういうところに行くような装いも化粧もしていないから明らかに浮くと思うとまたため息が出た。
*
「あ、こっちこっち!」
そう手招いた男性は明らかに20代前半の若そうな男の子。まだ新社会人1年目とかそれくらいではないか。私は一緒にいるキラキラとした若くて可愛い女子メンバーの後を重苦しい足取りで着いていった。
「あれ?後1人は?」
「少し遅れるって連絡あった。」
「えーそっちが1人追加してって言ったから会社の先輩にわざわざ来てもらったのに〜。」
「悪いって。でも遅れてくる人超イケメンだから安心しろよ。」
「え、まじで?超嬉しい。」
そんな会話を横耳に私は1番端の席に座った。もちろん私の目の前には誰も座っていない。そりゃあ若い子は若い子で私はビールを頼んでとりあえず乾杯だけ一緒にした。いいところでお金だけ置いて帰ろう、そんなことをずっと考えていた。
「じゃあ自己紹介しまーす!」
ノリが若いなあと思いながらもご飯だけは美味しかった為ご飯を食べながら皆の自己紹介を聞いていた。そして順番は私に回ってきた。
「じゃあ辻川さん!私の隣の席の先輩。美人でしょ。」
「まじ美人。てかなんかこっちの3人と雰囲気が違いすぎてびびるわ!」
「年上のお姉さんって感じですよね〜。」
「まあ、本当に君たちより年上なので。辻川みのりと言います。今日は梅田さんに連れてこられました。」
「でも来たってことは彼氏募集中ってことでいいんですよね!?」
「…えと、」
「ちなみにおいくつですか!」
「あー女に年齢聞くの最低〜。辻川さんは落ち着いてるけどまだ28歳なんだからねぇ。」
「28歳かよ〜すげ〜!」
いやお前が言うんかい。とツッコミはよそう。というか28歳だからすごいって最近の子の言動が良くわからない。たった6-7年しか変わらないはずなのに、こんなにも彼らは怖いものなしでいられる。それが少し羨ましくも感じた。
話題は私からようやく反れ、みんなが楽しそうに喋っていた。私はお手洗いに行き、席に戻ると先ほどから席替えをしたのか私が座っていた場所には違う人が座っていた。私は余った席に座っていると少しだけ落ち着いた雰囲気だった子が私の横に座った。
「辻川さんって今日数合わせ?」
「え?あ、うん。今日言われて。」
「優しい先輩なんですね。」
「…まあ、梅田さんも好意で誘ってくれてるから断るのも申し訳ないしね。」
「へ〜。あ、俺の名前覚えてます?」
「…えっと、」
「佐々木です。」
「…ごめんなさい。」
「ずっと食べて飲んでましたもんね。好きなんですか?」
「あ、はい。お酒とか、食べ物も好きです。」
「何で敬語?さっきまでタメだったし年上なのに。」
「…何となく?」
この子、私なんかと話しててつまんなくないのかな。そう思いながらもお酒を注いでくれたり話題を振ってくれたりと想像しているよりは楽しい時間を過ごせた。
「ねえ、連絡先交換しようよ。」
「…いいけど、私なんかとして別にいいことないよ。」
「いいの。辻川さんがいい。」
若い子からそんなきゅんとする台詞を吐かれたところで可愛いという気持ちしか生まれなかったけど悪い気はしないので携帯を取り出そうとしたとき、主催の男の子が「やっときたぞ〜!」と声を上げた。
私はそちら側を見ると、その見覚えのある風貌に思わず息を飲んだ。